深海へ
大磯の片付けを終えて目黒に戻ると、日はとっぷり暮れていた。駅張りの映画のポスターをなにげに読むと、新海誠監督作品上映とある。「秒速5センチメートル」「雲のむこう、約束の場所」「言の葉の庭」の3本をシニア料金で見ると、1000円。終了は午後10時になりそうだがいいじゃないか。足はすぐに向いた。
6時開場。「雲のむこう」から始まった。
この作品は苦手なSF仕立て。あまり気持ちが入らないままエンドマークをむかえた。感想をもらすものはない。
次の「秒速5センチメートル」はよかった。中学を出ると離れ離れになってしまった遠野貴樹と篠原明里の物語。種子島と栃木ではあまりに遠い距離。その最後の夜に、貴樹は雪の北関東を列車を乗り継いで明里のもとに向かうまでの煩悶が1部のキモだ。この作品は3部作になっていて、2部は移住した種子島で高校生活を送る貴樹を密かに恋する同級生の視点の作品。そして、3部は社会人になって、仕事についたものの自己啓発も解放もできないままくすぶる貴樹。一方、明里は許婚とまもなく結婚する直前にある。二人の縁の糸はどうなるか(私としてはポジティブな結果を期待した)。貴樹の手繰り寄せた糸はカラカラと回り続け、挙句カットアウトした現実だけが残った。後味が深い。
そして3本目が「言の葉の庭」。クツ作りを目指す高校生が10歳年長の国語の教師に恋をする物語。舞台は雨の新宿御苑。物語の説明はしない。少年の移ろっていく心が手にとるように分かる。
3本のなかで、タイトルのいいのは「雲のむこう、約束の場所」。物語の深さは「秒速5センチメートル」。「言の葉の庭」は悪くはないが、どう評価していいか、今の段階では分からない。ただ新海作品はいろいろな顔を持っていると知って、これからの作品にも期待したいと思った。
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