夜の桃
中年や遠く実れる夜の桃
西東三鬼の句だ。なんとなくエロティックだ。桃というのは性愛を連想させる。
山口百惠も幼い頃にその名前を囃したてられて嫌だったと語っている。
三鬼の人生がドラマになったとき、夜の桃というタイトルでは抵抗があるので
「冬の桃」というものに変えたと、プロデューサーのヤスオさんから聞いた。ドラマのヒロインを演じた三田佳子さんの夫君だ。
冬の桃では季重なりで、おまけに季節が矛盾する。
だがよく考えると、冬の桃は三鬼の人生にふさわしいのかもしれない。
岡山出身の歯科医で、戦前シンガポールで開業し植民者として無頼な生活を送り、
戦時中は俳句弾圧に連座して神戸で亡命者のようにして生き延びた。
女性関係も出入りが激しかったという。晩年の三鬼の肖像を見ると、色悪のにおいがする。
芸術家というより、実業家の風貌でもある。
だが、俳句の切れ味は抜群だった。
算術の少年しのび泣けり夏
これなどは、まさにこの時期の句であろう。夏休みも終わろうとする頃、算数の宿題がやっていなくて途方にくれる男の子。「サザエさん」のカツオのようだ。
水枕ガバリと寒い海がある
私のアドレス名MIZUMAKURAは、ここからいただいた。

右側が三鬼
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