マイフェボリットソング・ある日渚に
夕暮れの浜辺を歩いてきた。大磯こゆるぎの浜には人影がまばらだった。
引き潮だったので、水際をはだしで歩いた。歩くと、足裏がここちよい。
夕方の浜風はさやかで潮の香がふわっとする。加山雄三の「夜空をあおいで」を思い出した。
1966~68年は、カヤマユ―ゾーのブームだった。私もギターを覚えたばかりで、新曲が出るとすぐ「平凡パンチ、デラックス版」の楽譜付録を入手して、弾いてみるのだった。加山雄三のペンネームは弾厚作。彼の作詞、作曲で、渚を歌った作品がある。「ある日渚に」だ。珍しく岩谷時子の詩ではなかったが、ちょっと南仏の匂いがした。
ある日渚に
渚によせる 光る波は
やさし君とぼくの 愛をよぶ しらべ
忘れはしない 可愛ぃ あのえくぼ
なつかしい ほほえみ 胸に抱きしめて
ひとりで ゆうべ見た 君の夢
めざめれば さみしく
カモメが飛んでいた♪
君まつ船に 今は人もなく
せつなく ぼくは 君の名を呼ぶさ♪♪

この歌そっくりの風景を、後に私は南フランスの海岸で見た。1980年のことだ。パブロ・ピカソの取材でスペインからフランスへ抜けたとき、フランスの国境の港町、サンジャン・ド・リッツに泊まった。リゾート地だが秋になって、都会の客たちは帰っていて、うら寂しい港町だった。ホテルは海に面していて、朝大きな窓を開けるとそこに浜辺があり、わずかなカップルが静かに散歩しているのが見えた。バーブラ・ストラザイドの「追憶」の1シーンのようだった。
寒くなって窓をしめると、テーブルには焼きたてのクロワッサンとカフェーオレがあった。
その年の日本は冷たい夏で、私はここでその夏初めて泳いだ。
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