壮絶、檀一雄

この半年、日本浪漫派の文学に無性に惹かれる。太宰や坂口を含めている人脈だ。
かつてファシズムに迎合してきたしょうもない人たちだと偏見を抱いたが、近年太宰、檀のすさまじい人生を知り、作品を読むと、頭を垂れるしかない。特に檀一雄にはますます心を奪われる。
檀一雄が亡くなる直前まで20年をかけて完成させた自伝的小説「火宅の人」は、癌末期の病床で檀が口述筆記で作り上げた作品だ。その最終の文言に目が吸い寄せられる。
「アハハ、夏は終わった。さよう、世の有様の、デパート即売式の規格人生は悉くかなぐり捨てた。…ざまを見ろ。これからが私の人生だ。…万歳! これが私の本当の夏」
『火宅の人』を読みとおし、檀一雄の人生を知った上で、この言葉に出会うと万感胸に迫る。
この文言は口述だと書いた。実際にその録音テープが残っており、それを基としたテレビドキュメンタリーが制作されている。番組は、檀一雄が亡くなった10年後、口述筆記の録音テープが見つかったことをきっかけに制作された。
ディレクターは私が尊敬する鬼才片島さん。
故人となった檀がまざまざと立ちあらわれてくるような傑作だった。末期ガンの苦痛に耐えながら口述筆記に取り組む檀一雄の生々しい肉声・・・。
番組中この最後の言葉を発する檀の声が登場する。病床らしく声はかぼそくしわがれているが、語気はたしかだ。ふりしぼるように語る――
「アハハ、夏は終わった」、「これが私の本当の夏」。
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