O君の冥福を祈る
通夜で昔の仲間に会った。直会の席で故人を肴にして昔話をした。私を除いて皆現役だ。故人となったO君はまだ40歳だったから、故人の仲間はほとんど働きざかりなのだ。
今から15、6年前、社員旅行で塩原温泉に行った。新人からベテランまでディレクターが14人、それにデスクと、プロデューサーの私と総勢16人。ここにO君も新人として参加していた。
塩原温泉の老舗旅館に泊まった。女性もメンバーにいたので、最初の宴会は大声もあげることなくつつがなく終えた。その後、部屋に分かれてから乱れた。マージャン組はともかく「酒乱派」「どたばた派」は始末におえない。普段、大人しい奴に限って、酒が入ると目が据わり無理難題を叫ぶ。
管理職は私一人。先輩風を吹かせて、若いディレクターをつかまえてプロレス技をかけて喜ぶ。実は私も人のことはいえない。「はしゃぎ派」だ。ディレクターたちが本気を出せば40過ぎの私なんてひとたまりもないはずだが、一応上司ということで気を使ったのか、若手は黙ってアキレス腱固めにかかってみせる。
そのうち全員酔いがまわって、私も布団の上に2,3度投げ飛ばされる。倒れるとすぐ布団が私を覆う。つまり私は布団蒸しにされたわけだ。じたばたもできないうちに、布団の上から誰かがポカリポカリと私をぶつ。一人や二人でない。
くそーっと布団を払い飛ばすと、全員私は何もしてないよと、手を振る。そんなこんなでワアワアやりながら、夜が白々と明けた。
次の日は、新幹線が停まる那須塩原まで出た。その近くにあるサファリパークへ全員で行った。まだ酔いが残っていた。
パークはバスで巡回するシステムだ。1台チャーターすることにした。出発前、運転手がぜったい窓やドアを開けないように注意を促した。
にもかかわらず、窓を開けて手を出し猛獣を挑発するふとどき者がいた。二人でやっている。一人が手をひらひらし、もう一人が囃す。そのうち大声でライオンに呼びかけているではないか。
ライオンがのっそり立ち上がった。こっちに来る。と突然突進。
「早く、窓を閉めてくださーい」怒鳴る運転手。
「そら、閉めろ」と声をかけあって窓をバタン。同時にガラスにライオンの爪がガリリ。・・・
「お客さん、やられたらどうするんですか」半べその運転手。そしてきつい一言「責任者誰ですか」。全員、手を上げて私を指した。
などという、フザケタ旅に、今宵の死者であるO君も、おめおめ生き延びている私も参加していた。
「知床旅情」の歌の文句じゃないが、♪飲んで騒いで、丘に上れば、遥か国後に白夜はあける・・・、だったなあ。
O君の冥福を祈る。
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