明日から入院
明日から池尻大橋のT大病院に入院する。月曜日に執刀を受ける前立腺肥大部分の除去手術のためだ。出血の量にもよるが、一週間ほどの入院となるだろう。当分シャバとはおさらばだと思って、映画を見ることにした。
エビスガーデンシネマにかかっている話題の「DEARダニー/君への歌」を見た。名優アル・パチーノ主演の人生物語。
スターとして絶頂期を過ぎたが、いまだに過去の栄光でうたい続けているダニー。往年のロッカーだ。たしかに過去のヒット曲さえ歌っていればそれなりの贅沢なくらしも許されていたが、一方空しさも感じていた。
そんなとき、腹心のマネージャー(クリストファー・プラマー)が昔の古い手紙をダニーに見せる。新人だったダニーへの励ましの手紙だった。たとえどんなにヒット曲で名声をあげようとも、けっして音楽への愛を忘れるなという熱い手紙だった。書いたのはあのジョン・レノンだった。何があったが分からないが、その手紙は当時のダニーへ届くことなく43年が過ぎ去り、長い年月を経て今ダニーへ届いた。クスリ漬けで若い愛人にボケて人生を自堕落に生きていたダニーへ、それは大きな衝撃を与えた。
若い頃の悔いをみつめることにした。クスリ漬けで嬾惰な生き方をして、ある娘をたぶらかしそして捨てた。その娘はダニーの子を身ごもったと聞いたが詳しくは知らない。風の噂で娘は血液のガンで早死にしたそうだ。その忘れ形見はニュージャージーに住んでいると知って、ダニーは訪ねた。むろん、捨てられた息子は激しくダニーを拒絶した。息子には多動性の障害をもつ幼女と妊娠した妻が寄り添っていた。ささやかだが幸せがそこにはあった。が、ひとつ大きな悲運が息子の家族に影を落としていた。息子は母と同じ遺伝性の血液のガンを患っており、最悪の事態も予想される状態にあったのだ。ダニーは自分の人生を取り戻すために、ある行動に出ることにした・・・。
一部実話に基づいた物語だと、映画のチラシには書かれてある。きっとジョン・レノンの手紙を受け取ったミュージシャンがいたのだろう。それをヒントにその後の闘病物語が付加されたと推定されるが、けっして湿っぽくない。アル・パチーノの実年齢は私より4、5歳上だと思うが、この物語は私たちベビーブーマーも物語だろう。だって、業界に入って40年というキャリアはまさに私と同じだ。だから、この物語は他人事でなく、自分に起きたものとして、私は2時間ずっとスクリーンを見続けた。
映画がハネたのは午後5時。エビスガーデンの夕焼けの丘を下りながら、今見て来た映画を思い、明後日の手術のことを思った。
40年前、私はまだ黄色いくちばしのテレビマンだった。これからどんな人生が待っているのか、不安だが大きな期待ももっていた。その思いは今まで持続してきたか。悔いることはなかったか。私の前から去ったヒトたちに未練はなかったか。後悔はしていないか。目黒、長者丸の河岸段丘に秋の大陽がうっすらと陽を落としていた。
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