マイ・フェボリット・ソング(お気に入りの歌)
今のお前の仕合せは何かと問われたら、通勤の帰路と答えたい。
夜7時37分渋谷発、湘南ライナー。ボックスシートを独り占めして、ささやかな
自分だけの祝宴を挙げるのだ。デパ地下で購入してきたウニイカやポテトを肴に、黒ビールを
1時間かけて飲み干す。窓外の京浜の町の赤い灯青い灯が走り去って行くのを眺めながら、ちびりちびりとやるのだ。
時には、吉野弘さんのエッセーなどを読むときなど、至福の時間だ。
汽車の旅はいい。まして夜汽車の旅は。
北帰行
唄:小林 旭
1 窓は夜露に濡れて
都すでに遠のく
北へ帰る旅人ひとり
涙流れてやまず
2 夢はむなしく消えて
今日も闇をさすろう
遠き想いはかなき希望(のぞみ)
恩愛我を去りぬ
3 今は黙して行かん
なにをまた語るべき
さらば祖国愛しき人よ
明日はいずこの町か
明日はいずこの町か
この歌は、戦前の旅順高校に在籍した者が、休みを終えて日本を離れる時に歌ったと
聞いたことがある。旧制高校生が、弊衣破帽でマントに包まり、独り北上する夜行列車の
窓外を見ているという光景。・・・このイメージに昔つよく憧れた。
今、私の通勤で利用する列車は、渋谷から小田原だから北帰行にはならないが、やはり独り帰る汽車の旅は北が似つかわしい。
友人の「縄文ドリーム日記」主人は津軽の人だ。東京の大学にいた頃、夜行で東北、
奥羽本線を継いで帰省したと言っていた。そのとき、東北と奥羽のレールの響きが微妙に
変化するのが良かったなあと懐かしむ。
うらやましい。私も都を離れるなら北へと、思ってしまう。
今から30年前、上野から直江津周りで金沢へ帰る人を見送ったことがある。
上野駅はまだ古い駅舎で、北の玄関にふさわしい佇まいだった。終着駅らしい淋しい賑わいがあった。
夜8時に出発した「はくたか」を送った後、私は世田谷の砧まで帰った。上野の桜が散った頃のことだ。
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