同窓会
昨夜の同窓会を新幹線の車中で思い出している。車窓全体に伊吹山が広がっている。頂には大きな雲が掛かっている。この山の向こうに故郷の越前若狭があると思うと、今すぐにでも帰りたい気分になる。
同窓会は2つの組の合同だったせいか思わぬ多数の参加者で盛況となった。中には高校を出て以来の顔もいくつもあった。懐かしいがその後の生き方が異なっているせいか、向き合っても話が続かない。互いに、老けたなあ、元気かの言葉以上のものはない。
2次会にカラオケスナックへ流れてからはさらに会は散漫となった。地元の歌手とやらがやたらでたがる。こんな男のご当地ソングなんてどうでもいい。
結局、対話も隣に座った田中君だけとなる。彼とは同じ大学へ進学したこともあって話題もいくつも共通するものがあって楽しかった。だが、彼は越前市に住んでいて終電に間に合うよう10時前に帰って行った。
トイレに立ったとき酔いが回って少しミスをした。素面ならないことだ。ショックだった。このままでは泥酔するかもしれない、何かやばいものを感じて、私は幹事に断わりを入れて早々に辞去することにした。外に出ると、晩秋の冷たい糠雨が降っていた。
ホテルまでひと気の絶えた駅前通りを雨に打たれながら歩いた。途中小腹が空いたので屋台のラーメンを食べる。ラーメンは昔の味だったことがなぜだか嬉しい。屋台のテントからはみ出て、雨の中に立つ。落ちてくる雨粒をラーメンどんぶりで受ける。味の薄くなったスープを一気飲みす。なんだか自己処罰をしているみたいだ。見回すと、商店街に人影はなく、この街の暗い未来を勝手に妄想する。雨はいっこうに止まない。
同窓会の参加者のことより不在の死者のことが気になって仕方がなかった。実はボディブローとなって、心に響いていたのだ。最近のジュンボウとハシバさんの早過ぎる死の影は払いのけてもいっこうに消えなかった。60を過ぎたばかりの、人生8合目の死。すこし早すぎる。他人事とは思えなかった。
急に人恋しくなり、銀行の前のベンチに座り
広島の旧友に電話をかけた。こちらの荒れた気分を察したのか、深夜にもかかわらず電話の相手は気持ちよく私の突電にも応じてくれた。愚にもつかない話をするうちに心が落ち着いた。時計を見ると、とおに11時を回っていた。雨脚はますます激しくなっていた。
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