秋の日差しのなかで
昨日の御嶽山の突然の爆発騒ぎも嘘のような9月最終の穏やかな日曜の朝。秋の日差しがベランダに降り注いでいる。
この一月でもっとも心に残ったのは、9月16日の深夜に見た「胸の泉に ハンセン病家族の葛藤」という松山制作の番組だった。なにげなく偶然み始めて、目が画面に釘付けになった。詩人塔和子の弟井土一徳の心の葛藤を描いたドキュメントだ。
12歳のときハンセン病を発症した井土ヤツ子は、13歳で離島大島にある施設に隔離される。以来、昨年病死するまでの70年間この地に留まり、故郷に帰ることはなかった。兄弟とも疎遠になった。
弟の一徳のもとにある日電話がかかり、二人は松山のポプラの木の下であう。長く会わなかったが、一徳はすぐ姉のことが分かった。若い頃の母親とそっくりだったのだ。その後、二人はうどん屋に入ったが、一徳は姉と呼ぶことができずただ泣くのみ。姉は「もう泣かんとき」と言って慰めてくれたと、その番組のなかで一徳が証言するシーンに心が鷲づかみにされた。…
井土ヤツ子はどれほど母と会いたかったか、故郷に帰りたかったか。「帰郷」という詩が残されてある。《いわしと言えば故郷の海が見え さやえんどうと言えばさやを摘んでいた母の姿が見え …たそがれた私の頭の中で考えられる帰郷をしている》
数日、亡母のことを思い出すことが多い。敦賀の実家の庭で洗濯物を干していた母の姿。蚊遣り線香が燻る座敷の中で、眠りにつく前に思い出を語っていた、そのときの母の口調。ふつふつと湧いてくる。「ヨシアキ」と小学生だった私を呼ぶ夕方の母の声が聞こえる。
秋の日は部屋の奥深くまで差し込んでいる。
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