サイパンの子供たち
昨夜見たドキュメンタリー「僕らは玉砕しなかった・少年少女たちのサイパン戦」は、番組としての完成度は今ひとつもの足りなかったが、いろいろなことを考えさせられた。
サイパンでは軍隊のほかに3万近い民間の日本人がいて、昭和19年の戦闘で全員玉砕
したと当時報じられていたが、実際は1万人近く生き残っており、大半は10代以下の
子供だったと番組は伝える。自決を迫られながら、何らかの理由によって生き延びた
子供たちの証言が明らかにされる。
当時、大本営の発表や戦陣訓によって鬼畜の米国人につかまったらなぶり殺しに
されると教育されていた。だからサイパンにいる日本の大人も子供も、戦闘がはじまると必死で逃げた。その果てに追い詰められて、バンザイクリフの悲劇へとつながっていく。
有名な日本女性の崖からジャンプする映像をめぐって、番組は意外な事実を引き出す。
あれは母だという老人が登場する。少年だった彼は、母といっしょに逃げていたがあの崖あたりではぐれてしまっていたのだ。映像は不鮮明だが、体つき、髪型で母に違いないと信じる。
彼は、その女性が身を投げるまえに捨てたものにこだわる。事件の前日母が自分の手で殺めた乳児の死体だろうと推測するのだ。彼は洞窟に母と幼い妹とこもっていた。妹は泣き続ける。同じ壕にいた軍人から泣き続ける子供を始末しろと迫られた。他人の手より自らがと母は乳房を赤子に押し付けた…。
映像の女性が彼の母かどうか、番組でははっきりしない。が、サイパンの自決した背景にさらに大きな悲劇があったことを明らかにしたのだ。
担当のプロデューサーは「国家によってだまされる悲劇を繰り返さない」ためにも見てほしいと、新聞で語っていた。
アメリカ人につかまったらなぶり殺しにされると信じて子供を処分したり自決していったりした、という話を今のわれわれは笑えるのだろうか。大本営の「全員玉砕」という発表を信じた当時の庶民のことを無知と断罪できるだろうか。
アメリカのイラク侵攻の理由は、フセインから大量破壊兵器をとりあげることだったし、フセインが核兵器を製造しているとも告げられた。だが、いまだに、そんなものは見つかっていない。あの話はいったい本当だったのだろうか。何のために誰が持ち出したのか。
国連の承認もとりつけることもなく、真偽も確かめることなく、
そういうことに、日本はまったく疑うことなくアメリカの「対テロ戦争」に追従している。
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