蛍川
夕べ遅く敦賀の実家へ帰った。一人暮らしの母が外出の格好でいるから何だと聞くと、
親戚のおばさんが今朝86歳で亡くなり、お悔やみに出かけるという。
私も、昔を知っているので同行しお参りした。
帰宅すると10時近かった。風呂を浴びて裏庭に出ると、蛍が飛んでいた。
例年、イチジクの木に群がるのだが、今年は雨も少なく蛍が減ったと母はいう。
蛍の光を見ていると、賢治の言う「生命電流」のような神秘を感じる。
日中、暑い京都にいて、敦賀に戻ると夜風が涼しい。実家の字名はアゾノ。
アザミが生える野原という意味だ。昔、このあたりは薊が一面咲く野原であったろう。ひょっとすると、安達が原も同じ意味かなあ。とすれば、うちのばあさんは「鬼婆」だったりして。夜寝ていると、流しで包丁を研ぐ音がしたりして、と親不孝な想像をする。
家近くには、芥川龍之介『芋粥』に出てくる田舎豪族柴田氏の庭園がある。都から落ちてきた貴族から見れば、アゾノは草深い地に見えたことであろう。この野にはあちこちに湧水がある。地溝帯として発達した山系が扇状地を作り、その途中から伏水が表出するのだ。
裏庭の川の水源もそのひとつで、水が清い。昔は、この水が天然の冷蔵庫になっていてスイカや瓜を冷やすところもあった。友人の屋号で「瓜割り」というのがあった。あまりに水が冷たいので瓜が割れたという伝説に由来する。
例年、この時期は雨水も加わり、川は溢れんばかりになるが、今年はさっぱり。蛍の光も弱く感じるのは気のせいか。

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