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今朝、定期検診を受けたところすこぶる順調だと医師から太鼓判を押してもらった。
病院の廊下に設置されている血圧計に腕を差し込むと、124-76。これまた安定値、というか理想的な値だ。思わず気持ちが弾んでくる。10時半、オフィスにもどった。
朝食抜きで受診したせいか、正午になるとひもじい。久しぶりに寿司でも食べるか。道玄坂、TOHOシネマの地下に寿司清があることを思い出した。手ごろな値段でネタが新鮮な店だ。チェーン店だが中高年の客が多い中級の店。会社から徒歩で15分はかかるが美味しいものを食べるに労は厭っては駄目だ。
寒風吹きすさぶなかどしどし歩いて、年末の東急本店どおりを抜け坂下交差点にたどりついた。連れはなく私ひとりで寿司清の暖簾をくぐった。ランチタイムということでカウンターも椅子席も満員。カウンターに立つ5人の従業員もてんてこ舞い。熱気がすごい。
1050円のランチ握りを所望。カウンターの真ん中あたりを案内され座った。担当の職人は店長だ。ラッキー。そばに新人が見習いとしてついている。客は私の隣に五十代過ぎの金のローレックスをはめた中年紳士。その隣が60後半の熟女。ずんぐりとした中年体型だがジーンズをはいている。仕事をしているようには見えない。さりとて専業主婦のご身分でもなさそうだ。店長はこの3人の注文をうかがいながら、それとなく店全体の動きを把握している。おひつのご飯が切れそうになると奥に向かって、追加注文を出したり、新しく入ってくる客の席を指定したりと忙しい。
出だしにマグロの赤身と白身魚のにぎりが1貫ずつ出た。マグロをつまむと口のなかでシャリのうまみがあまく溶け出す。1050円の寿司セットといって、この店は侮れない。ネタが新鮮で上物を使用していると定評がある。ここまでは上機嫌であった。
セットの半ばになった頃、隣の隣のおばはんの声が大きくなった。どうやらカウンターを挟んで立っている新人に口をきいているようだ。「あんたも、横顔がようやく一丁前になってきたね」。褒めそやすのは聞いていてもここちよい。
だが、次第に舌鋒鋭くなってきた。客が帰っていくとき、新人は包丁の手をとめて、「ありがとうございました」と挨拶した。おばはんはすぐに注意する。「あんた、手を動かしながら顔だけ上げて挨拶が出来なきゃ一人前といえないわよ」
言われた新人は何と返事していいか分からずニコニコ笑っている。だが気まずい雰囲気があたりに広がった。店長は新人の馴れない受け応えが気になっているのだが、店全体に心を配っていなくてはならないから、おばはんに対応できない。
おばはん、だんだん調子に乗って、魚のネタの品定めまで始めた。耳障りで仕方がない。さっきまで美味しかった鮨がだんだん味を失ってくる。不愉快になってきた。
昔(といっても20年ほど前)、こんなオヤジがカウンターの端にいた。ごたくをえらそうに並べるのだ。店もお得意とあって無碍にもできず、にやにや拝聴する。なんて光景があった。
今は社会進出をはたした女性のなかから能書きを垂れるおばはんが登場するようになったのだ。今朝の新聞でNTTは女性管理職をこれまで以上に増やすと前向きの記事が出ていたが、一方で悪しきオヤジのスタイルを真似る後ろ向きの現象も、これからは増えていくのだろうなあとひとりごちた。
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