明け方に目が覚めて
午前4時30分。目が覚めトイレに立つ。真水をいっぱい飲んだら目がさえた。ベッドの上でぼんやりしていたら、不意に「落ち葉焚き」の歌詞が脳裏をよぎった。
♪垣根の垣根の曲がり角 たき火だたき火だ 落ち葉焚き
あたろうか あたろうよ 北風ピープー 吹いている
さざんか さざんか 咲いた道 たき火だたき火だ 落ち葉焚き
あたろうか あたろうよ しもやけお手てが もうかゆい
口ずさんでいたら遠い金沢時代を思い出した。暮れが近づく頃、家庭教師のバイトで材木町の上のほうまで歩いて通った。尾張町からバスの駅にして5つほどあったか。当時はバス代がもったいないと歩いた。2、30分の道のりが少しも苦にならなかった。くねくね曲がる道筋にはたしかにさざんかも咲いていた。雨上がりのときなどは黒い地べたにぽっかり白い花が浮かんでみえた。
夜9時過ぎ。横山町から賢坂辻まで出てバス道とは違う路地をぽとぽと歩いた。師走の金沢は雪の便りもちらほら聞こえてきて、寒さもひとしおだったと思うが、たしか靴下もはかずに薄着で行き来したものだ。
詳しいことは知らないが、ロンドン五輪で優勝した女子柔道の松本薫さんの出身もこの地区で、兼六中学に通っていたと聞いた。私の教え子も兼六中学から錦ヶ丘高校へ進学した。勉強を教えたあとで出してくれるラーメンが、麺が伸びてはいたが空きっ腹にしみた。松本選手を画面で見ると、いつもそのラーメンを思い出す。
あの頃、可愛がってくれた人たちもみんな死んでしまっただろう。今生きていれば百歳に近い。ひとりひとりの顔ははっきり思い出せないが表情や口調やその人の気配のようなものが浮かんで来る。竹馬やいろはにほへとちりぢりに、か。
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