
すぐムキになる悪い癖
広告界を舞台にした新刊の長編ミステリー『シリウスの道』を読んだ。週刊文春で
連載されたものを収録したものだ。作者は私と同世代の藤原伊織。長く電通に勤めて、
たしか江戸川乱歩賞を受賞して数年後そこを辞めて職業作家になったはずだ。
デビュー作の『テロリストのパラソル』は同世代的関心を抱かせたが、次に読んだ『蚊とんぼ―』
というSFもどきを読んで落胆した。いくら大衆小説が荒唐無稽とはいえ、そりゃないだろうという設定だった。だからその後は放棄したが、昨日、同僚の机にあったので、この新刊を手にとった。
広告業界に身をおく、主人公辰村がこんなセリフを吐く。
「ああいう愚劣な中身しか流せないガラクタを持ってたって、場所ふさぎなだけでしょう。」
――これは、テレビのことを言っているのだ。
この見解は作者本人の感想でもあるだろう。一応、辰村自身に、広告業界のことを虚業と言わせてはいるものの。しかもこの辰村という男はテレビ番組のあれこれを喋喋する。変じゃない。
テレビ持ってないなら、番組はどこで見ているの。会社でか。それってもっと場所ふさぎじゃないのか。
なぜか、出版、新聞という活字媒体は、テレビを揶揄するとき下品になる。
なら、こう反論したい。週刊誌てものは“愚劣な中身”ばかりじゃないのかい。有名人の醜聞や愚にもつかない特集が多くないかい。今週だって、また、やはり、二子山部屋スキャンダルの見出しが躍っているぜ。――と、ムキになってみる。
たしかに、テレビ特にワイドショウやお笑いのワンパターンとうさんくささにはウンザリすることは事実だけど。
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