春たけて
大磯もみじ山は全山新緑の季節をむかえた。青葉、若葉が美しい。遠山を見れば浅黄色に滲む。
今朝、鶯の本鳴きを聞いた。ホーホケキョを繰り返したあとケキョケキョと続き、チチチチと後を引く。雨上がりの澄み切った青空に鳴き声がすいこまれていく。
ベランダのタイルに座り込んでしばし聞きほれた。
遅く家を出た。ツヴァイクの渓に降りていく入り口に大きな欅がある。美しい枝ぶりに新芽が吹いて清清しい。山道に落ちる樹影もいちだんと濃くなっていた。
ここから冬の間は相模湾が眺望がきくのだが、葉が出てそよぎ始めると次第に隠れていく。葉隠れの海となる。
昨夕、海を見るとウサギが群れになって走っていた。春の爆弾低気圧のせいで海上にはつよい風が吹いていると知れた。白波はまことにウサギの疾走に似ている。こうの史代の名作「この世界の片隅に」の主人公すずが瀬戸内の海でうさぎが走るのを見ていた光景を思い出す。大風は今朝の未明まであったが、夜が明けると穏やかな春の日となった。
ガードをくぐって、駅までだらだら坂を登ると、汗が吹き出た。カーディガンを羽織っていたからだろう。駅には私と同世代の中高年ハイカーがたむろしている。みな引退後の時間をもてあましているのだろうか。
フリーランスの身軽さで、ゆっくりとオフィスに向かう。東海道線は10時を過ぎると乗客も減る。進行方向と逆の席にすわって相模川を渡ると、後方に立派な富士山が浮かび上がった。裾まで白く輝く富士山はあまりに大きいので電車を追ってくるようだ。
鶯、新緑、富士山と月並み句のような景を今朝が味わった。
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