この夕暮れに
大船で降りて寿司を食べた。
5時を回って風が冷たくなっていた。ホームに立つと正面に観音様がある。背後に金色の雲が流れていた。誰も気がつかないようだが、冬の夕暮れに見る観音は息をのむぐらい美しい。
ぼんやり小学校の頃を思い浮かべた。木造の古い校舎だったが慈悲に満ちた祖父のようなやさしい佇まいであった。毎週、月曜日の朝には全校生徒が参列する朝会が行われた。冬の寒い日は床の冷たさがしみた。あの頃、小学生は裸足で校内を飛んで歩いていた。校長の話は何も覚えていない。足裏が冷えていくのが辛かったこと、学友の背中が揺れていたことだけを思い出す。
講堂には4つの出入り口があって、その上の壁には1年生から6年生までの子供たちが書いた絵や習字が並べられて張ってあった。月ごとに作品の入れ替えがあった。
弟が2年生だったときに、彼が描いた母の絵がその壁に張られたことがある。私は5年生だった。素朴な線でシンプルに描かれていたが、たしかに母親の特徴をよく掴んでいた。
参観日のとき、母はその絵を見て喜んだ。
たったそれだけのことだが忘れられない出来事になっている。
気がつくと空は暗く、京浜の町町には灯りが満ちていた。
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