土曜の昼下がり
目黒有隣堂で立ち読みしていたら、ケータイが鳴った。
句仲間で先輩の猫翁さんからだ。
「ちょっと知らせておくけど、風悟さんが危篤なんだ」猫翁さんはさらっと告げた。
一瞬耳を疑った。12月の句会では元気はなかったが風悟さんは参加していた。大学の教員である風悟さんは入試委員に今年選ばれてかなりきつい作業が続いたとは聞いていたが、まさか危篤に陥るほどとは思ってもみなかった。
私より7歳ほどの年少で、元来病弱であったとは背骨の湾曲している体型からも見てはとれた。そこへ過重な仕事が押し寄せて体調を崩したらしい。年末に入院したと聞いたが、年が明ければまた句会に顔を見せるのだろうと楽観していた。
風悟さんは慶応のドイツ語の先生らしい。直接本人から聞いたことがないが、宗匠や猫翁さんからそう聞いた。
いつもぶっ飛んだ句を作る人。
雁木道暗黒星の二人連れ
夢裡凶変大根洗ふ尽き果てて
意味を考えても分からない作品。それが風悟さんの特徴だった。今、経歴を調べるとホーフマンスタールの戯曲の研究者とある。
風悟さんとの付き合いは3年ほどだが、句会の出会いしかなく他のことはほとんど知らない。
ただ一度、豊島区の公民館で句会があったときに思いがけないハッケンをした。
豊島区出身の画家吉田善彦の絵が壁にかかっていた。それを見て、風悟さんが「これ、ぼくの伯父さんです」と恥ずかしそうに呟いたのだ。
たしか吉田善彦は速水御舟と姻戚関係にあるはずそのことを口にすると、嬉しそうな顔になった。そんな思い出しかない。
なんとか危篤を乗り切ってもらいたい、風悟さん、頑張れ。
来られた記念に下のランキングをクリックして行ってくれませんか
人気blogランキング