ぼこぼこ
今朝の瞑想の最後に不思議な「夢」というかイリュージョンを見た。
朝の帝国ホテルのダイニングでコーヒーを飲んでいた。友人の谷口は立ってズボンを直していた。そこへ若い男が私たちの間に割り込んでコーヒーを飲み始めた。マナーが悪く、コーヒーカップからコーヒーが溢れて周りに飛び跳ねる。谷口はベルトをいじりながらその若い男に文句をいった(ようだ)。声が聞こえないのだが口ぶりで理解した。
言われた男はいきり立って、カバンを持って席を離れようとする。そのとき荒々しくカバンを振り回したので、コーヒーを再びまき散らす。
谷口はさらに注意をした。彼は急いで身支度しようとするのだが、なかなかベルトを締めることができず焦っている。
その谷口の叱責に、若い男は引き返して谷口につかみかかろうとする。大男だ。谷口は165センチの小柄。周りにいた外国人が二人のつかみ合いを止めようとするので、私も加勢して、二人を引き離そうとする。
と、若い男が谷口のこめかみを殴って、床に倒した。よろよろと倒れた谷口はこめかみをさすりながら立ち上がり、男のコートの襟をつかむ。そして、支えつり込みあしの技で男をごろんと横倒しにする。
谷口は少年時代から柔道を習っていた。大学の体育の時間で私は彼の切れ味のするどい技をたびたび見ていた。高山の小天狗と異名をとったことがあるということを、私はそのとき思い出した。
横たわった男の顔面まで谷口はにじり寄り、その顔にこぶしを2つ3つ呉れる。男の顔は見る見る腫れてくる。
まだ抵抗しそうな男を見て、谷口は口をこじ開けてその前歯を指でごつごつとたたく。だが谷口の爪が割れたようで、手を離し、まわりに獲物がないか探す。金槌があった。谷口はその金槌を取って、若い男の歯をたたこうとする。
すると、若い男のだらんと下がった手にいつのまにかバイソンと呼ばれるリボルバーが握られていた。
男はそれを少しずつ上に向けて谷口の胸あたりを撃とうとする。
そこでシーンが切り替わった。掴み合ったふたりがそのまま飛んで行く。これからどうなるか分からない。ただ喧嘩状態のふたりに私と外国人もぶらさがっている。
瞑想を終えて、この文章を打ち始めたのだが、なぜこんなイリュージョンを見たのか自分でも分からない。が妙にはっきり印象が残っている。谷口がこのふとどきな若い男をぼこぼこにしていることに溜飲を下げている私がいる。でも、そこまで追いつめなくてもいいのにと、男に半分同情もしている。
谷口とは親友の谷口茂雄。大学時代の親友で卒業してからも文通はある。彼は故郷の高山に帰り英語の教員になった。最後は乗鞍岳が見える山の中学校の校長で終えた。小柄で穏やかな谷口だが腕っ節は昔から強そうだった。だが泣き虫でセンチメンタルな面も多分にあり、そこが魅力の男だった。
こいつが女に振られたときのことを今でも覚えている。俺の部屋に駆け込んで来た。何も言わずに部屋の隅に転がっていたギターを手にとって歌いはじめた。舟木一夫の「絶唱」だった。涙をぽろぽろ流しながら歌った。私は呆れた。だが委細かまわず谷口は大声で歌い続けた。冬の寒い日だった。火の気のないわびしい6畳の部屋。西条八十の絶唱に涙する友。
今は、谷口は引退して、教育委員会の手伝いのようなことをしていると賀状に書かれてあった。
冬真っ盛り。高山は深い雪に埋もれているだろう。少女少年たちを相手に英語をこつこつ教えているであろう谷口に会いたい、会っても話なんてなにもないのだが、会いたい。そんな気持ちがこんな変な夢を見させたのだろうか。
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