新春歌舞伎
とうとう本風邪になってしまった。先日来、風呂からあがったあともパソコンの前で長い時間思案ばかりしていた。湯冷めをするからと再三注意されたにもかかわらず、いいからいいからといなしていたのがよくなかった。昨日の朝に起きてみると、鼻のなかが乾いてひりひりする。咳が始まるとなかなか収まらない。
3時前、浅草公会堂の前で待ち合わせ。海老蔵登場の新春歌舞伎を見にきた。
入ったのは午後の部で、出しものは「彦山権現誓助太刀(ひこさんごんげんちかいのすけだち)」「海老蔵の口上」「勧進帳」。新春公演とあってぜいたくな演目だ。
「彦山」では主役の六助を演じたのは片岡愛之助。白塗りをすると祖父仁左衛門にそっくり。この人の芝居を見るのは2度目だが、堅実な芸で安心して堪能できる。女形はお園を演じた中村壱太郎で、若さもあってにおい立つ美しさ、けなげさ。六助とお園が力を合わせてかたき討ちに出立するまでを描いた「毛谷村」の段。
はじめに虚無僧姿で現れたお園。やがてかぶりを捨てると丸髷の若い女が現れるという仕掛けはえも言われぬ色気を感じた。女形の男装という色気は、吉田沙緒里のもつ色香のようなものだなと独りで納得。
口上は海老蔵。年頭にあたり「にらみ」をひとつといって、成田屋のお家芸を披露した。これをもらうと一年中縁起がいいとか。
最後に、お目当ての「勧進帳」の幕が開いた。弁慶は海老蔵、富樫は愛之助。義経は片岡孝太郎。歌舞伎の十八番。豪快な弁慶、貴公子義経、客気の富樫。分かりやすい構図が美しい舞台となって繰り広げられる。海老蔵の大きな芝居は弁慶にぴったりで言うまでもないが、愛之助の富樫がなかなか渋く、惻隠の情を示す男のやさしさがよく出ていた。大向こうから「松島屋」と声が二度ほど飛んだのも当然だ。
勧進帳の最終場面。弁慶たちに富樫が酒をふるまう。ひとり弁慶が受けて大酒を飲む。宴たけなわに乗じて、弁慶が義経一行に早く行けとひそかに合図する。主従5人が顔を伏せ速足で花道を駆け抜ける。この後姿に義経の悲しみを見た。
そして、この一行に後から追いかける弁慶ひとり。あの長い花道を六方を踏んで去っていくところで芝居が終わるという切れ味の良さ。あらためて歌舞伎芝居の実力を思い知った。
今回は前から5番目の席で観劇することができた。役者の表情がよく見えて3時間があっと言う間に過ぎた。
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