登羊亭
神楽坂の赤城教育会館で目白遊俳倶楽部の12月句会が開かれ参加した。長年、目白の教室で行われてきたのだが、会場が不如意となったため神楽坂に活動の軸が移っている。悪くはないが、地下鉄飯田橋から坂を登ってしか行けないのが難点。
その不便さもあってか、11月の句会は極少メンバーになり、幹部の猫翁さんが機関誌で警鐘を鳴らした。危機感がメンバーに伝わったとみえ、今回は十余名の参加となった。出句の数もおおはばに増え、当季雑詠は51。兼題は延べ71。
心に残った句を記しておこう。句とはおもしろいもので、句会の熱気で瞬時に選んだ句と、事後にじっくり読んで味わう作品と異なるものがある。だから、句会で評価を得なかった句でも滋味深いものを後日発見することがあるのだ。
大根干す遠嶺の雪の色映し 夏海
ほれぼれと見とれていたり大根穴 水音
いづかたの猫の鈴の音の聖夜かな 二六斎
とんびだけ眸(ひとみ)に残る訣れかな 葱男
故郷も空青からむ欅枯る ぐう
ぐうさんの句の意味が最初分からなかったので採らなかったのだが、宗匠の二六斎の解説で了知し、そのつもりで読むとだんだんよくなってきた。
解説とは。欅(けやき)は美しい木にして葉がいっぱいに茂る木だ。ところが落葉となると一気に葉を落とす。裸木となった欅の空間の大きいこと。その大きい空間にのぞく青空。懐かしい故郷の青空をそこに見いだした。
そのつもりで読むとたしかに情感のある句だ。「欅枯る」の読み取りが句理解の骨頂だった。
葱男さんの句も今朝になって読むと心に沁みる。京都からの投句だから当人の弁は聞けないのだが、これも宗匠の解釈で了知。
訣れは相当な深いわかれを指す言葉。そのわかれを経験したあとに見上げた空。そこに一羽の鳶が舞っていた。それしか目に写らない。・・・悲しみの深さがよく表れていると宗匠は読みこなした。さすが宗匠の理解は深い。
私の俳号は登羊亭。18年前大磯に家を建てたときに大江さんに家の名前をつけていただいた。正式には「光丘登羊亭」という家の号だ。そこから一部をいただいて、俳号を登羊亭と称している。この登羊亭が久しぶりに座のみなさんから褒めていただく句を作った。
横雲の端から凍る能登の空 登羊亭
先日、全編を見て感動した「私たちの時代」からイメージをもらって作った。あのドキュメントの背景にあった能登門前の海と空。
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