「北の国から」を見て
「北の国から 2002遺言」前編を見た。このシリーズを断続的に見ているが、どうしても地井武男の泣くシーンが見たいとシリーズをはしょって最終章を先回りして見たのだ。この「2002遺言」が「北の国から」の最終作品といまのところなっている。
五郎(田中邦衛)は富良野で螢と3歳の息子の快と共に暮らしていた。純と、蛍と結婚した正吉は草太から引き継いだ牧場を潰し、多額の借金を残して町を去っていた。純は今は羅臼で暮らし、正吉は行方は知れずになっていた。
蛍は正吉のことを思っているが、借金を返済するため懸命に働いているらしい正吉はなかなか姿を現さず、不安にかられている。純は北の果て羅臼で新しい恋を育みつつあった。
その物語の途中で純のかつての恋人シューの挿話がある。宮沢りえが演じるシューは過去に傷をもっていたが純と次第に愛し合うなかとなる。
シューは純だけでなく、父の五郎とも仲良くなり親交を深めた。その後、何か事件があって、純とシューの恋は破綻したらしい。そのパートを私はまだ見ていない。そこを跳ばして、最終章「2002遺言」を見ている。
その別れたシューが純のいない五郎の家を訪ねて来た。五郎は歓迎する。その好意にこたえてシューは五郎のために風呂を立て、五郎は喜んで風呂に入る。薪を燃やしながら、シューは今度お嫁に行くことになったと告白。驚く五郎に、これを渡してと純にむけた手紙を託す。この間の宮沢りえが演じるシューのせつなさがいい。旅だっていく淡い悲しみが画面いっぱいに広がる。
手紙を手にした五郎は風呂からあがって、戸外に出て来る。シューは別れの言葉も告げず、夕日の丘をくだっていく。その姿がシルエットとなり見送る五郎とカットバック。この場面を見ながらさまざまなことを思った。
この後のシーンは羅臼での純の恋の話となって展開していく。そして、終わりの頃になって地井武男が演じる中ちゃんが妻の癌を知らされて慟哭する有名な場面にうつってくる。まさか、最後の最後にこの場面とは予想していなかったので、いささか不意をつかれた。前の宮沢りえ挿話に心奪われたままでこのシーンに来たからだ。
でも、さすがに世上名高い感動的場面といわれるだけあって、地井の迫真の演技は胸にせまるものがあった。
と、ここまで昨夜遅くまでかかって見た。祝日の今日、午後遅くから後編を見た。唐十郎が登場してドラマが変わったのかと思うほどラブコメディ調になった。これが最終章のバージョンになるのかといささか落胆気味でその後を見ると、中ちゃんの妻が癌で死んだときから俄然ドラマの運びがよくなる。そして、通夜の日、中やんが娘の新居となる家でひとり妻を偲んで泣くという場面。
巷間このときの地井武男は数日前に実際の妻の急死に遭遇しているから、このドラマの演技は真に迫っていると伝えられていた。たしかに、鼻水垂らして涙を溢れる姿は演技だけとは思えない。さめざめと男泣きする地井の姿に、今年71歳で早死にした彼の境涯が重なって、深い情感が巻き起こった。
そして、このドラマのエピローグ。富良野駅頭での五郎たちと蛍母子との別れの場面。ここで孫のカイが「もういいかい」というセリフを小さく叫ぶ。顔色が変わる五郎。ここの展開はさすが倉本聰だと感じ入った。
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