さいなら
青空が見えたからといって、お調子にのって駅前のスクランブル交差点を小躍りして歩いた。道の半ばで足がもつれてバタリと倒れる。信号が赤に変わり、次々とやって来る。駅前交番の巡査が出てきて、車を整理する。若い巡査から「大丈夫ですか」と声をかけられて、恥ずかしいやら痛いやらでろくすっぽ返事もしないで、駅に向かった。
今話題の映画「最強のふたり」を見た。いくつもの賞をとり、仏独で大評判という触れ込みだったから期待した。日比谷シャンテも会場はほとんど埋まっている。
小雨にうたれたせいか、半そでのたもとが濡れていて、エアコンの通風がからだの熱を奪っていく。ぞくぞくした。映画が始まって、10分も経たないうちに尿意を催す。30分を過ぎると蛇口から漏れそうな気分。だがロードショーで座席指定の高級映画館では、ドラマの途中にごそごそ動き出すこともはばかれる。我慢をする。そんな状態で見た「最強のふたり」は、物足りない。というかわざとらしい反ヒューマン映画だった。障害者に偏見をもたないとするアフリカ系スラム育ちの主人公。全身麻痺の大富豪に対して、冗談半分で動かない麻痺した足の上に熱湯をそそぐ。そうして、互いに大笑いをする。というこの場面。全然笑えなかった。欺瞞と偽善に満ちた障害者問題。ポリティカルコレクトネス過剰の世相をばっさり切ったというつもりなのだろうが、そう思えない。映画全体、ビートたけしのすべったコントを見ている気がした。
話題のベストセラーを手にとった。奥泉光の『黄色い水着の謎』。テレビドラマ化されて評判をとった小説。作者は芥川賞作家にして、現在、その賞の審査員でもあるという純文学育ち。ところが、手遊びでライトノベルのような小説に手を出した、という。日本一、下流な大学つまり偏差値がサイテーの千葉の田舎大学を舞台に、そこの変わり者の教員や間抜けなようで抜け目のない学生たちのドタバタを「生き生き」と描いている、という。
読んでいるうちに、不快感がこみあげてきた。下流の若者だって、したたかに生きて人生を楽しんでいるんだぞという上から目線のスタンスが気になって仕方がない。なんか、「最強のふたり」同様、大きな勘違いをしていると思えてならない。半分読んで、放棄。
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