嵐のなかの芝居見物
シリアの虐殺が収まらず、東シナ海の波頭が一段と荒くなっている。
土曜日、日本を襲った台風17号が関西から関東へ北上する午後1時、京都南座の前に私は立っていた。雨風は一段と強くなり、そばの鴨川も白波をたてている。街角の人々も雨宿りの場を探して右往左往している。
南座の前の大看板、市川海老蔵特別公演「古典への誘い」。画面中央には白の獅子に扮した海老蔵の英姿。出し物は能の「石橋」、舞踊の「連獅子」と銘打たれてある。この公演は海老蔵自身の発案企画で、能から取材した歌舞伎の演目を2つ同時に観客に味わってもらおうという趣向になっている。
東京から、嵐のなかを飛んでいって、1階10列の通路そばの一等席に陣取って見た。
まず、能の金剛流の一門による半能「石橋」。従来の能とまったく違って、飛んだり跳ねたりの獅子の霊。なにより能楽の演奏の素晴らしさに心を奪われた。鼓と大鼓の水も漏らさぬアンサンブル。息の長い「間」。あらためて能楽の芸術性の高さを思い知る。
この「石橋」は唐の霊地・清涼山に架かる聖なる橋を舞台にした物語。ここに現れた霊獣の2頭の獅子が華麗に舞うことを骨頂としている。
歌舞伎舞踊「連獅子」はこの「石橋」から本歌取りするばかりか、上記の物語に親獅子が子獅子を谷底に落として試練を与える説話が付加されている。
親獅子を海老蔵が、子獅子を中村壱太郎が演じている。ものすごいスピードとアクロバチックなウゴキ。その迫力に唖然とする。今、海老蔵がもっとも嘱望される役者という噂は嘘ではないと感じた。
芝居がはねた後、いっしょに東京から見に来た方たちと京極の酒場へ行き、夜も更けるのを忘れて升酒片手に芝居談義となる。外の風雨は激しくなるばかりであった。
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