静かな反響
昨夜、無事放送が出た。
夜10時からのETV特集「吉田隆子を知っていますか~戦争・音楽・女性~」という60分のドキュメンタリーだ。今年の春過ぎから制作して、やっと陽の目を見た。元々8月の戦争関連番組がよく放送される15日前後を予定していたのだが、今年は沖縄が注目されて、その関連番組が2つ8月のオーダーに入ったため、押し出されるかたちで9月初旬に放送となった。
放送を終えたあとの反響は悪くはない。こういう人物がいることを初めて知った、彼女の楽譜をきちんと読みたい、などの熱い声がいくつも挙がってきている。有難いことだ。
なにより驚いたのは、活動家でもない吉田隆子が4度も特高に引っ張られながら、けっして転向、妥協しなかったこと、という歴史通の方たちからの声もある。
治安維持法とか特高警察という存在は、国家が総力戦を遂行していくための暴力的歯止めであったことを、今回の番組制作を通してつくづく理解した。教科書だけではなかなか分からないものだ。それにしても、人形劇団プークの女性団員たちの肝っ玉の座っていることには敬服する。川尻錦子さんは94歳という高齢にもかかわらず、いまだに世の不正に対して怒りを隠さないなど情熱は少しも衰えてはいない。
今回の番組で吉田隆子の描けなかった部分がある。彼女の恋である。最終的に、劇作家久保栄と20年以上にわたって暮らしをともにするのだが、それ以前に彼女は数回の恋愛と結婚を繰り返している。その情熱性、一途さなどをもっと表してみたかったが、わがチームにはそこまでの技量がなかった。隆子の「可愛さ」を描くことには力足らずであった。少し口惜しい。
この吉田隆子に私が興味をもった最初の動機は、彼女の兄正の存在である。長兄は異母兄で、血がつながるのは次兄の正だけだ。その正は早くに養子となって出されたため、飯島姓を名乗っていた。兄の名は、飯島正。
なんと、戦前から活躍してきた高名な映画評論家ではないか。ヌーベルヴァーグが盛んな頃、私たちはその名前を映画雑誌でよく目にしていた。あの飯島の妹であれば、きっと本物にちがいないと、根拠のない確信をもったのだ。
来られた記念に下のランキングをクリックして行ってくれませんか
人気blogランキング