最後の海
日曜朝、6時に起きて大磯の浜に行った。タオルと水のペットボトルだけ携えて海水パンツのままの海行きである。
ツヴァイクの森には夏の朝の光が差し込みきらきらしていた。なんとなく森が荒れている気がするのは、イノシシ出没の張り紙のせいか。
春先からイノシシが出て草を刈ったり捕獲網をしかけたりしたので、森のあちこちが様変わりしている。
金子みすゞの詩がある。
このみちのさきには、
大きな海があろうよ。
はす池のかえろよ、
このみちをゆこうよ。
このみちは私の場合ツヴァイク道になるのか。かえろとはかえるのこと、念のため。
家から浜まで徒歩15分。汗をかき小走りで海まで出るとすっかり体はウォーミングアップしている(まるで他人の身体を見るようだ)。6時半の浜辺にさすがに人は少ない。
朝の波に乗ろうとするサーファーたち10数名がいるだけで、海水浴場には人気なし。監視の見張り台の真下に荷物を置いて簡単な準備体操。
前の晩から海に入ることを決意していたので体には精気がみなぎっている。
朝の光が海面に反射してまぶしい。大磯こゆるぎの浜は遠浅でなく膝下からすぐどぼんと落ちる。そこを越えると腰ほどの水量となるが波がうねってくる。周りに人がいても結構水難に出会いそうな海だ。慎重に体を沈めていった。水の冷たさが心地よい。平泳ぎで10メートルほど泳いでみた。腰が浮くと体がすっきりする。背筋がすっと伸びた気がするのだ。
去年の海でもこれが最後だと思ったが今年までたどりつくことができた。来年もなんとかなるかなあと楽観しながら仰向けにぽかりと浮かんでみた。
夏の空と思っていたが、端のほうに秋のすじ雲がひっそりあった。もうすぐ二百十日がやって来る。
滞水時間20分。さくっと海から上がり濡れたからだのまま家をめざす。
7時を回って、人々が家から出てきた。一日が始まるぞ。
岩波書店の小林勇翁は70近くまで鎌倉の海で泳いだと自慢していた。彼の場合は本格的な水泳だから敵いっこない。こちとらはぼちぼち行けるところまで挑むことにしよう。
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