千秋楽まで、あと2日
国立博物館で開かれている「ボストン美術館展」を見に行った。
10日が千秋楽で、会期は残り3日しかない。そのせいか、上野に朝早くからたくさんの人の波が寄せた。大半が高年の男女。つまりおじいさんとおばあさんがよろよろと詰め掛けたのだ。
こんなに日本人って美術好きだったっけ。とにかく入場制限するほど混みあっていて、会場に入るまで、炎天下に最低30分は待たされた。年寄りには体が毒ではないかと心配したが、存外、お年寄りはけろりと順番の列に連なっている。
中に入ると、黒山の人だかりはとりわけ3箇所で大きく膨らんでいた。
「吉備大臣入唐絵巻」と「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」の2つ絵巻。曽我蕭白の最高傑作『雲龍図』。尾形光琳筆の松島図屏風。特に絵巻の人の群れはすごかった。おそらく館内モニターを使いながら、絵を見物しているから人の列がほとんど動かない。後から来る人たちがさらに加わり、級数的に人垣が大きくなる。
「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」の美しさ、絵画表現の的確さにはほとほと驚いた。後白河上皇が率先して、この絵巻を作ったと伝えられているが、このモンスター(怪物)はいったい何を時代に仕掛けようとしていたのだろうか。デモーニッシュな美意識を、その絵巻からじんじん感じた。
これまでの私だったら、人ごみは避けて、鑑賞をあきらめて帰っているだろう。だが、残り僅かな会期では、このチャンスは二度とないと炎天下ウェイティングに耐えた。
感心したのは、曽我蕭白の「虎渓三笑図屏風」。
廬山に隠棲したの僧慧遠のもとを訪れた陶淵明と陸修静が歓談している様子が描かれている。話に夢中になって俗世に通ずるとして渡らぬと決めた橋を越えたことに気付いて、三人で大笑した場面。いかにも愉快な気分が画面に流れていて、蕭白のひととなりに共感した。きっと、人生をけっして逆さまに見ることはしない、心意気の広い人であったにちがいない。大笑する3賢人の表情を見ていれば分かる。
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