うすもの
大橋の病院から20分かけて徒歩で会社へ。途中、神泉の駅あたりで汗が吹き出てくる。円山町の三業地をぬけて、東急本店にまで来ると、汗は乱れ落ちとなる。夏になった。
松涛町のプラタナスの街路樹が輝いている。まもなく雨季が来る。
プロダクションの浅野くんと酒を酌み交わした。6年ほど前に、写真家木村伊兵衛のドキュメントをいっしょに作ったことがある。感性のいいディレクターだったから、もう一度いっしょに作りたいと思っていたが、今年の春、ひょんなことから「極上美の饗宴」でジャクソン・ポロックで「同じ船」に乗ることになった。
ディレクターではなくプロデューサーとしての参加であったが、相変わらずシャープで、物語の仕掛け、構成も実にスマートであった。彼とは相性が合うみたいで、画の撮りかた、つなぎ方がすべて好もしい。
4年間、4人の若い音楽家を追ったドキュメントを、このポロック作品の前に仕上げていたのだが、その作品がギャラクシー・月間賞を受賞したそうだ。よかった、よかった。やっと彼の才能が認められてきたのだ。そのうち、きっと大化けすると、私は見ている。
楽しい酒を2時間飲んで、恵比寿で別れた。
同期のN氏が珍しく「お茶でも飲まないか」とやって来た。彼とは故郷(くに)も同じ福井県。浪人しているから、年齢は一つ上だが屈託がない人物。疲れた表情で、クニの老いた両親のことをこぼしはじめた。92歳と89歳の父母が最近めっきり弱り、兄妹3人で交互に面倒をみるようになったという。月のうち10日、福井に帰るのだが、これが結構体にこたえるよと、N氏らしくない弱音を吐く。
でも、我が家とて、母がもし病気で長患いになっていたら、同様のことが起こったかもしれない。そういう意味で、母は「こども孝行」の人だった。久しぶりに母のことを思い出した。6月、梅雨まえの小さな晴天。母だったら、どんな短歌を詠むであろうか。
今は晴れているが、夕方になって天気が崩れるかもしれない。カバンに折りたたみ傘を入れてきた。
シャツは綿の白を着てきたが、インナーがやや厚いものを着けた。今日から6月。うすものにすべきであった。
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