向田邦子を考えた②
向田邦子の秘めていた恋を、はじめて世に知らせたのは、私のチームだと思う。
向田が書いた手紙、恋人バブが書いた手紙と日記を、発見したことから、その
恋が判明したのだ。
2001年彼女の没後20年に、恋の顛末を「向田邦子が秘めたもの」と
題して放送した。
この放送が出るまで、ジャーナリズムも評論家も、向田は美人で聡明だが
男性とは無縁とみていた。「ラブストーリー」は書いても、自分のラブはない人と
見られていたのだ。2,3の親友以外、弟妹ですら知らない恋だった。
そういう中で、スタイリストの原由美子さんは男性の存在を嗅ぎ取り、その恋を
偲ぶ向田を発見している。何百枚と残された若き向田のポートレートを見たとき
原さんは気づいたのだ。この写真を撮った人物に、向田は恋をしていたと原さんは
見破ったのである。
今朝、原さんの『スタイリストの原です』というエッセーを読んで、原さんはやはり
知っていたのだと確信した。その本は1991年に出版されている。まだ誰も向田邦子の秘めた恋を知らない頃だ。
向田と映画の話になったとき、原さんはローレン・バコールが好きだと向田に告げたことが
ある。すると、昔ローレン・バコール風のスタイルで友人のカメラマンに撮影してもらったが
似合わないので、その後はマリリン・モンロー派に転向したと向田が言ったと原さんは書いている。
友人のカメラマン・・・原さんがその言葉に感応したのはよほど鋭いかそれとも原さんが当時恋をしていたか、どちらかだ。
原さんは私より少し年長だ。戦後の日本女性の新しい道を切り開いてきた。お会いしたことはないが、文章を読んで生き方や感性に共感をもつ。
原さんの生い立ちも素敵だ。鎌倉で育ち、父上がものを書いていられたという。その父上は10畳の書斎をもっていたと、原さんはさりげなく書いていた。うらやましい。
補遺:この写真に秘密があった。向田邦子の大きな瞳に人の影が映っている。これが、
恋人バブのただ一つの姿だった。
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