雨のトキワ荘
南長崎2丁目のバス停を降りて、あの懐かしい商店街の奥まで入った。
雨がぽつぽつ降っていたが気にもならず、あのトキワ荘の跡地を義弟といっしょに目指した。ところが道を見失って、トキワ荘への入り口がはっきりしない。そのうちに雨脚が強まり、やむなく退散して最初の目的酒処ぽん太に向かう。
建築士の義弟に頼み事があったので、昨夜目白まで呼び出した。目白駅前で落ち合って、バスに乗って南長崎まで遠出するので、どこへ行くのかと弟は尋ねた。「良いから黙ってついて来い」と引っ張って行ったのがトキワ荘界隈のぽん太だった。この店の主人夫婦鉄馬さんとぽん太さんは俳句仲間。めじろ遊俳くらぶの主要メンバーである。このところ句会に出席できず敷居が高い。句会の様子も知りたい。酒好きの弟にも大磯の家の修繕を頼みたい。このふたつの要求を満たすため、渋谷から豊島区まで出ばったのだ。
むかえてくれたご夫婦はいい笑顔。とりわけ鉄馬さんの温顔についこちらの気持ちもほころぶ。久闊を叙して、すぐ牛すじの煮込みでぬる燗でいっぱいやる。ビール好きの弟はエビスビールをグラスに注いでいる。お通しは蕗の煮付け。これがめっぽううまい。蕗の立て筋の繊維が前歯にさくさく切れて歯ごたえが良い。醤油で煮染めた味も絶妙。料理の名手ぽん太さんはさすがだ。壁に貼ってある値札を目でよりわけてうどの天ぷらを所望。あとはゆっくり盃を傾けながら、弟に頼み事をしていった。
にしても、今年の5月は雨が多い。しかも春の細い雨でなくスコールのように大きい雨粒だ。折りたたみ傘を準備しておいてよかった。
8時過ぎ、ぽん太を出ると太い雨すじに閉口しながら、バス道まで出る。目白行きのバスは行ったばかりのようだ。やむなくタクシーに乗った。
雨のめじろ駅前もまた風情があった。駅舎から通勤客が降りて来てばらばらと傘を広げて、商店街に消えて行く。陸橋から対岸をのぞむと私鉄の黄色い電車が雨に滲んでいる。ここで一句ひねらなくてはいけないのだが出て来ない。
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