シネマディクトになりたいのに
このところ、劇場で見た映画もホームシアターで見たDVDも面白いものに出会ったためしがない。ああ、イライラする。昨夜とて、ツタヤが推薦する「映画の醍醐味」がある作品ということで、眠い目をこすりながら見た「クライム&ダイヤモンド」はがっかりだった。
詐欺師フィンチは縛られて頭に銃が突きつけられる。銃をかまえる殺し屋はもし面白い話を聞かせたら命は助けるという。この殺し屋は大の映画好き、映画フリークというわけだ。この設定からして、まあコメディであることはうすうす気づいてはいるのだがなんとなく胡散臭い。映画まめ知識は満載かもしれないが、肝心の、この映画の物語が薄味で気持ちが埋没しないのだ。話の合い間に、ドジなマフィアの手下や妖艶なドラッグクィーン、アクの強い検視官等が登場してくるのだが、それほど好奇心もそそられない。それがどうしたと突っ込みをいれたくなる。
映画好きの殺し屋なんて設定は、ウッディ・アレンのような才人でないとなかなかうまくいかないものだ。この映画は構想に10年かけたという触れ込みだが、それほどのものか。才能がないものはコメディに手を出すな。
劇場で「ジョン・エルガー」、DVDで「小川の辺」を見たがいずれもハズレ。ああ、イライラする。
藤沢周平の原作で、監督が篠原哲男だから期待してみた時代劇「小川の辺」。主演の東山紀之は悪くはないが、敵役の佐久間森衛を演ずる片岡愛之助はまったくものたりない。山田洋次は「たそがれ清兵衛」で舞踏家を敵役に起用した。その理由の正当性が今になって分かる。監督の慧眼に畏れ入る。
外国で高い評価を受けたという女優菊地凛子は、「ノルウェイの森」のときと同様ミスキャスト。あまりにトウが立ち過ぎている。大事な脇役、奉公人新蔵役の勝地涼もまったくスカ。朝ドラで株をあげた尾野真千子も少しもいいところが出ていない。藤竜也なんていい役者をこんなところで無駄遣いするなと、何度も叫びたくなった。
先週見た「マイ/バック/ページ」もそうだった。主演の妻夫木聡はまあ悪くないが、相手役の松山ケンイチがいいところなし。評論家川本三郎の原作はとても面白かったのだが、映画は遅滞している。原作は1968年から1972年の『週刊朝日』および『朝日ジャーナル』の記者として川本が活動していた時代を綴ったもの。三里塚闘争、ベトナム反戦運動などの「時代」を表すことに力入れ過ぎで、人がうまく描かれていない。監督が山下敦弘ということで期待したのだが、幻想だった。それでも、この作品がここにあげた3本のなかでは一番いいかな。
ああ映画中毒になりたい。植草甚一の同名のエッセーを読み始めたら、トリフォーの「大人はわかってくれない」を見たくなった。さらに連想して木下恵介作品を無性に見たくなる。
先日、ロケで矢切の渡しへ行った。木下の「野菊のごとき君なりき」の舞台だ。あの映画の夢のような光景にもう一度浸りたいという気になった。
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