さいとうたかをの名作「台風五郎」
今日は時折、陽光がさしても肌寒い。なのに、午後になって雲がわいた。
高麗山(こまやま)の上に積雲のようなかたまりが出来た。
積雲は普通入道雲と呼ばれて、夏に生まれるものだ。今年は去年より
やや寒いと思われるのに、夏のような雲が今日生まれたのだ。
この雲を見ると、劇画作家のさいとうたかを、を思い出す。中学生時分
貸し本に夢中になった。大阪の漫画出版社から発行された「街」とか「影」とか
ハードボイルド系の漫画(後に、この一派の論客辰巳よしひろによって、劇画という
ジャンルにまとめられた)が好きだった。そこで、画がうまく粋な匂いを振りまいて
いた作家が、さいとうたかを。その代表作が「台風五郎シリーズ」だった。
さいとうは、裏表紙に自分の画と詩を書いていた。今、思えば青臭い青春賛歌だが
中学生の私は感銘をうけた。たしか、その中に「息吹」という詩があった。
その詩に添えられた画は、山に向かって立つ若者の姿が描かれていた。
その山には白い大きな雲がむくむく湧いていた。
雲の峰から風がそうそうと吹いていた。
思春期を迎えようとした私にとって、青春というタームがこの画とともに刷り込まれた。
今はほとんどコミックを読まないが、かつては劇画少年だった。この劇画というコンセプトが誕生したとき同時代的に読んでいたから、その思い入れは人一倍ある。
ところが、初期の功労者がほとんど忘却されている。今でも人気があるのは
さいとうぐらいだ。
桜井昌一、辰巳よしひろ、K元美津、佐藤まさあき、石川ふみやす、さいとうたかを
彼らの画はまだ脳裏から去らない。
日本の漫画は世界に誇る文化と近年評価が高いが、最初に「井戸」を掘った人のことを
きちんと顕彰したらいいがと、思ってしまう。
ちなみに、さいとうたかをと言えば、「ゴルゴ13」が有名だが、私は台風五郎シリーズが
さいとうの代表作と考えている。
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