忙しいくせに
朝9時に家を出て竹橋の近代美術館へ出かけた。まもなく閉幕する「ジャクソン・ポロック展」を見る為だ。
3月に「極上美の響宴」で、ポロック芸術の秘密を解く番組を作ったときから、本物が見たいとねがってきた。今年は彼の生誕100年ということで、日本で特別に展覧会が開かれた。めったに集まらない内外の作品が70点以上一堂にあるのだ。ぜったい逃してはならないと、眠い目をこすりこすり東西線で竹橋まで行った。
44歳で急死した彼の人生のピークは1950年。この時期に描いたドリッピング、ポーリングの作品はどれも傑作。ところが、この作風に見切りをつけて新しいことに挑み、脱皮がうまくいかなくなった時期1953年あたりから、作品がつまらない。少なくとも、私は楽しめなかった。会場でも、そのへんの陳列はどんどん飛ばした。むしろ、初期の蛇のイメージに執着していた頃の油彩などに、ポロックの才能を感じた。今、手元にないので正確に記せないが、会場で入手したリストに鉛筆で作品評価を自分なりにつけておいた。暇になったら、ゆっくり画集と付き合わせて、再度、ポロック芸術を味わいたいものだと願っている。
実は、のんびり絵を見ているなんてことは許されないほど忙しい。「3丁目の夕日を探して」の編集がどかんと大きな暗礁というか氷山というか難題に衝突してしまった。致命的な認識のミスが、作業の手を止めてしまったのだ。この修復を急いでやらなくてはならない。
にもかかわらず竹橋なんかへ行ったりしてと、自分で自分を叱り飛ばして、編集室にむかった。
表現するということはけっして楽なことばかりじゃない。むしろ困難なことのほうが多い。これは、40年現場を歩いて来た経験から知っている。分かっている、のだが、いざ困難に直面するとため息がもれる。どーっと疲れがやって来る。
昨夜も9時過ぎまで編集に付き合い、スタッフのふたりと相談を兼ねてお好み焼き屋へ出かけた。帰宅したら12時前だった。
現状で手一杯だというのに6月と7月放送の「極上美の響宴」を担当しろとオーダーがはいった。イギリス特集で、ターナーとミレイをとりあげるのだ。その番組を担当している者が急遽ロンドンオリンピック特番を作ることになり、アナが空いたので入ってほしいというのだ。昨日、6時から40分間だけ、その引き継ぎをした。ターナー関係の資料がごそっとある。またしても、大きなため息をついた。
ところで、江戸時代、閻魔様の縁日にはおおぜいの小僧さんがお参りに来た。なーぜだ。
丁稚奉公していた少年たちは、この日だけはお休みをもらえたのだ。閻魔――エンマとは古インド語で休息という意味があるんだって。
千住にあるエンマ堂にはその名残が今もある。
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