コメディエンヌ
来月の東京スカイツリーの開業に合わせて、NHKも民放もいろいろな企画を練っている。
そのうちの一つを今手がけているのだが、これがめっぽう面白い。先々月までスカイツリー本体を一度も目にしたことがなかったのだが、3月に入ってバタバタと3度も4度も間近でご本尊を見ることとなったのも、この番組のせい。
番組のまだ正式タイトルは決まっていないのだが、押切もえの3丁目の夕日を探してというようなイメージ。小さな旅番組だ。
スカイツリーの周辺には江東区、墨田区、葛飾区、足立区、江戸川区の下町が広がっている。今から50年前の昭和30年代に、俳人石田波郷はその5区を歩いて「江東歳時記」という新聞連載のコラムを書いた。人気漫画「3丁目の夕日」の表す時代と重なる。ちょうど高度成長をむかえつつある東京下町はいろいろなものが大きく変わろうとしていた。そのなくなりつつあるものを惜しむかのような記録を波郷は115回にわたって断続的に読売新聞ローカル版に連載したのだ。
春待つや小鳥のなかの桂ちゃぼ
葛飾に歳時記を閉ず野火煙
その頃、カメラに凝っていた波郷は記事を書き俳句をひねるだけでなく、各地の風物を愛用の2眼レフカメラで切り取った。その膨大な写真が残されている。
その写真に残された地域をモデルの押切もえさんが5回にわたって旅した。
千葉県と接する矢切の渡しから深川までかなりの広範囲をもえさんは歩き回る。手がかりは波郷が写した写真。その場所は今どうなっているだろうと探し回った旅を、今編集している。
例えば深川。春の雨が降っている。隅田川の河口でかつてたくさんの用水があった地をもえさんは傘をさして行く。屋形船の止まり場まで行くと、法被を着た老人が雨でやや傾いたテントを直している。「雨で直しているのですか」ともえさんが声をかけると、「雨だから直しているんでい」と巻き舌の答え。そこから、二人は落語か漫才かのような会話を交わす。このやりとりがそこはかとなく面白い。編集しながらつい聞き惚れる。
美形のもえさんが絶妙の合いの手をいれるから、話し相手はみなたっぷりサービス精神を発揮して話すのだ。ユーモアがあり、お転婆でおきゃんな面を、もえさんはたっぷり見せてくれる。
矢切で渡し船に乗ったときなどは、大風が吹いて船が揺れているのに面白がって、遠くに霞むスカイツリーをこよなく愛でていた。
この楽し過ぎる旅番組をどうやって5本の枠のなかに収めるか、今思案の最中。
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