深川あたり
スカイツリーの関連番組で江東をロケして歩いている。
森下町から清澄にかけて、雨のなかを行った。深川あたりとでもいうのだろうか。
古くからのどぜう屋「伊せ喜」がある。昔から、庶民の銷夏法としてどじょうを食べることが多かった。その本場がこの店だ。
石田波郷の「江東歳時記」でも、この店を材にとっている。波郷はこの店で趣味のカメラを駆使して、かなりの枚数の写真を撮った。大半が店内の客の様子と調理場の料理人の姿。屋外は一枚もない。ほとんどが男同士の酒飲みたちだが、なかに家族連れやアベックもいる。(この時代はカップルといわずアベックだ)
波郷の写真は、灯りといい構図といい、まるで小津の映画の1シーンのような懐かしい作品となっている。波郷の何を、その泥鰌やは掴んだのだろうか。それを知りたくて、現在休業している「いせき」のあちこちを見て回った。
結核で2度入院して、胸うすいと自認する波郷だが酒はめっぽう好きであったようだ。無駄口をきかず、酔っても乱れない波郷の酒品は好もしいものであったようだ。
息子の修大さんの著書を読むと、何かにつけ波郷は酒を飲んでいる。当然酒席の句も多い。
街角から2軒目バア寒の内
コニャックバア鶴も寒明くるらし
敗荷(やれはす)の寂しき酒を温めけり
そういえば、波郷の句集に「酒中花」というのがあった。
こんな波郷の匂いも嗅ぎ取りたいと、森下町のどぜう屋に出張ったものの、店は休業となっていた。去年の3・11で木造の老舗の一画が壊れてしまったのだ。店のご主人の話によれば、改造して、新しい店舗でもういちど江戸の味を復刻させたいと願っているとか。
その店から50メートルほど離れて、馬肉を食べさせる粋な店がある。そこに回って、美味しいさくらを頂いた。ここの欄間にかかる寄せ木細工の上に「志ん生」という札があった。当人が貼った本物だそうだ。
今度は、仕事を離れて、晴れた夜にでも来たい。
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