克服
午後1時から大橋病院でMRI検査を受けた。
閉所恐怖症の私はこの検査が苦手。とにかく、あの電子洞穴のなかに送り込まれるだけで「発狂」しそうになる。マシンはまるでお墓にしか見えない。死して弔われているのではないかと勘ぐりたいような構造になっている。
その閉所に入るだけでも苦痛なのに、そこで検査のために留まる時間が、なんと20分。しかも洞穴のなかには凄まじい音響が飛び交う。以前、脳内出血を発症したときに、このマシンに放り込まれた。我慢と辛抱を重ねて8分滞在したが、そこでついにギブアップ。手にしたSOSの合図信号を押す羽目に陥った。苦い思い出である。
今回も同じ結果になるのではないかと恐れ、病院の玄関を入ったときから憂鬱だった。
地下一階のMRIルームに行く。若い看護師さんがにこやかに、私の調査を行う。
「これまでに経験したことは?」「2回、いずれも途中で敗退」
「閉所恐怖症だと思いますか?」「そうだ。とにかく、身動きできなくなるのを恐れる」
「では、中止しますか?」「いや、ここまで来たら、やります。キャンセルしても検査料はしっかりとられるのだし。途中離脱もあるかもしれないが、一応チャレンジします。」
若い看護師の前で引っ込みがつかなくなったのもあるかもしれない。ヤケッパチになっていたのかもしれない。私はパジャマに着替えて、マシンの前に立った。
ゴトンゴトンと、私のフレッシュ(肉体のことを英語でこう表現すると聞いたことがある)はMRIマシンの洞穴の奥まで運ばれ、停止した。目の前に金属の壁。く、苦しい。
スピーカーから看護師のガイドが流れる。「リラックスして、悪いことを考えないように。でも我慢しすぎると、精神に悪いですから、そのときは遠慮なく、ボタンを押してください」どっちなんだよ。
「始めます」の声に続いて、マシンが動く。ガーオン、ガーオン。ヤダヤダ、ヤダヤダ。ギスギスダ、ギスギスダアアア。機械音は2分毎に音色?が変化する。目を開けると圧迫感が強まるから目を閉じる。
鼻の頭がかゆい。掻きたい。だが、手を動かしてはいけない。額に何かが乗っている、ほこりか、羽虫か。・・・・
だんだん腹が立ってきた。
誰が悪いのか。不摂生の果てに病になった自分自身が一番悪い。だったら、この怒りをもっていく場がない。高校時代の数学の教師を思い出した。一番、殴ってやりたい奴だ。出て来い。だんだん幻想、幻聴の世界に入って行っているのだろうか。不安があたまをもたげる。この苦痛があとどれぐらい続くのだろうか。
と、マシンがストップした。
「終わりましたよ。出来たじゃないですか」看護師の天使のような囁き。
思いがけなかった。所要時間20分は、本日は7分ぐらいにしか感じなかった。やったー、ついにMRI克服。
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