定年再出発 |
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いっしょに見ること
先日の穂高で面白い体験をした。 山麓のホテルに3人のプロデューサーが3日間待機したときのことだ。夜間は山頂の前線部隊も行動をとらないから連絡体制は解かれる。暇だ。そこでSプロデューサーはDVDを東京からおよそ100枚分持ってきていた。黒澤作品はほとんどそろっている。角川映画、アメリカのテレビ人気シリーズなど、実にさまざまなジャンルがそろっている。 どれを見ようかと協議して、まず最初の1本目は、黒澤の「椿三十郎」を観ようということになった。新しいパソコンのDVDドライブは外付けの仕組み。これできれいな画像の黒澤を堪能しようじゃないかと、その気になった。ところが再生がうまくいかない。ブルーレイなら映像が出てくるが、普通のDVDは画が出てこない。10分ほど、パソコンのオーナーは苦闘したが、ついに諦めて再生可能なDVDのなかから選んだ次善の試聴をすることにした。その結果、角川映画「人間の証明」を見ようということになった。バブルな時代の角川映画で、当時、話題を呼んだ作品。私もKプロデューサーも見たことがない。退屈しのぎにはちょうどいいのではないかということで、3人が一致し、ホテルの一室にこもって2時間半、「人間の証明」を見た。 豪華な俳優陣、海外撮影など、金のかかった映画だ。イケイケの角川映画全盛期の作品だ。 監督は佐藤純弥、たしか「新幹線爆破」という佳作を作った人だ。脚本は松山善三。高峰秀子の夫で木下恵介の弟子、良心派といわれたはずだが、こういうサスペンスものに手を出すのは思いがけない。どんなふうに仕上げているのだろうか、期待が高まった。 そして、映画が始まると、10分も経たないうちに「突っ込み」「野次」が入って、全員で映画を「茶にした」。 とにかく映画は荒唐無稽でご都合主義なのだ。松田優作の深刻な表情がギャグにしかみえない。この物語は清張の「砂の器」もしくは「0の焦点」の剽窃じゃないか、挿話が多すぎて構成が破綻しているとか、各自好き勝手な言辞を吐く。わあわあ言いながら、それでも最後まで見た。結果、映画会は盛り上がった。 翌晩も映画会が行われた。機械の調整が出来たからどんなDVDも見ることが可となり、懸案の「椿三十郎」を試聴する。こちらは映画が始まると鎮まりかえった。ムダ口をきくものがいない。映画のもつ醍醐味に心を奪われていく。映画終了後、「さすが黒澤。間断するところがない」と賞賛の声しかない。言うこともないので早々に解散して、各自寝た。 最後の夜の映画会。何を見るかで3人の意見が割れた。私は市川崑の「ぼんち」を挙げた。まず見ようということで10分ほど試写。重厚で隙のない演出、どうやらこれは一人で見たほうがいいと判断して、DVD再生をストップした。二人もみんなで試聴するものでないという意見に賛同。 改めて、みなで映像を見るときと、個人で映像を味わうときとでは映像に対する反応が違うことを実感。みなで映像を見るのは、最近サッカーの生中継を試聴するパブリックビューイングといわれる。「みんなで見よう」ということだ。 ところが、現在はソーシャルビューイングのほうが勢いを増しているというのが、若い友人のH君の意見。彼は代理店に勤めているが、元はディレクターだったから、この業界には強い。おまけにテレビとネットの関係については、いまや論客になっている。その彼がソーシャルビューイングという言葉を創出した。だからまだ新しい考え方だ。H君はこの言葉の特許も取得したとか。 この言葉は日本語にすると、「いっしょに見よう」ということになるのか。みんなで見ようというより、もっと関係性が濃厚だ。含蓄のある名称だ。このソーシャルビューイング現象については、そのうちに、H君が新書にして世の中を啓蒙してくれるだろう。乞うご期待。 話が思わぬところへ逸れたが、親睦を図るためのソーシャルビューイング(いっしょに見よう)は、シリアスな内容よりおちゃらけた物語のほうが盛り上がるという“法則”を発見した。 3夜目の映画会。結局見ることになったのは、角川映画で、またまた森村誠一原作もの。 「野生の証明」だった。この映画は「人間の証明」以上に絵空事。高倉健が深刻に演じれば演じるほど可笑しい。全員、爆笑と野次の3時間となった。座は盛り上がり、和気藹藹。まさに、先述したように、親睦を図るためのソーシャルビューイングには真面目な作品を選ばないという鉄則を証明してくれた。 来られた記念に下のランキングをクリックして行ってくれませんか
by yamato-y
| 2012-02-14 14:45
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