英語版作成
今朝は早くから白熱ミーティングとなった。
去年放送したETV特集「この世の名残 夜も名残~杉本博司が挑む『曾根崎心中』オリジナル」の英語版を作成するにあたって、英訳が完成し、その検討会がインターナショナルの会議室で開かれた。出席したのは、放送版のPである私とDのF君。インターナショナルのDのWさん、アシスタント。局からソフト開発部のKさん。そしてアメリカ人のJさん、総勢6人。みな英語の達人だから、一言が多い。
あの名文句「この世の名残 夜も名残」は“We leave behind this world and we leave behind the Night.” となる。これはテキストだから、高名な英訳があって、それを参照すればいい。だが、独自のドキュメントとなるとそうはいかない。
▽2011年8月、日本演劇界で、ある事件が起きた。伝統芸能・文楽の古典「曾根崎心中」に連日千人を越す観客が詰め掛けたのだ。
これを変換すると。
▼In August of 2011, one event shook the world of Japanese Theater.
“Love Suicides at Sonezaki” – a classic of traditional bunraku theater --
drew a packed house day after day of the production’s run.
「曾根崎心中」も訳すと、“the Love Suicides at Sonezaki.”となる。Suicideは自殺だから、愛の自殺が心中と欧米ではとらえるらしい。いずれにしてもキリスト教社会では自殺は罪だから、心中というものは評価に値しないものだ。ところが、この日本では「死の勝利」のような観方もする。それが独特の文化として注目もされることになる。そのコンテキストに、杉本文楽もある。
杉本さんのインタビューを訳すのがまた難しい。話し言葉だから、必ずしも論理的でない。それをきちんと読み取って訳すのだ。
「残酷というか、やっぱり余韻、死の余韻というのですかね。刺してすぐ死んで終わりということでなくて。死ぬということは浄土への道行きなんですからね。
ですから、こう・・・瞬間的に死は来ないと思うんですよ。まあ、四十九日とかよく言いますけれど、段階を経て、浄土に至るというところですから」
▼It’s not so much cruel as it resonates with death. Death doesn’t come immediately after the stab. Dying means treading the path to the Pure Land. That’s why death doesn’t come instantaneously. We often hear about the soul passing in stages toward the Pure Land in 49 days.
この件(くだり)で、段階的な死「Death as progressive stages:」という表現に痺れた。
こんなふうにして、90分の番組全部に英語字幕がつくことになったのだ。英語版「この世の名残 夜も名残」は2月の末に完成して春のニューヨークで審査を受ける。それが第1次審査。その後、アジア地区での第2次審査を経て、10月の本選に望むのだ。世界の人たちは、この杉本文楽をどう見てくれるだろうか。
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