前の時間、後の時間
日本の人口推計が昨日発表されて話題になっている。50年後には現在1億3千万の日本の人口が8700万まで減少するという。65歳以上の老人が3人に一人となるそうで、年金などの社会保障制度などが破たんしてしまうと、テレビや新聞が騒いでいる。その頃はもちろん生きているわけがない、子供たちの世代が老人になっている。つまり現在の若者たちの老後の問題である。たしかに彼らには差し迫ったことだが、親世代の私らにはどこかに関係ないという「無責任」がある。
4年以内に襲って来るという首都直下地震は他人事ではない。目の黒いうちに見ることになるかもしれない修羅場に恐怖する。その恐怖に原発の事故が加わればもはや生き延びることはできないと深い絶望にかられる。
先一昨日、トミさんの出版のお祝いを、老年4人が荒木町のしほ瀬で開いた。甲州に隠棲しているHさんが久しぶりに上京したという機会に合わせて、70代の仲間が集まったのだ。私だけ60半ば。現役は一人もおらず全員年金生活者になっている。
トミさんが著したのは『ぼくのNHK物語』という自伝的ノンフィクションだから、当然、座は昔話と知人の話となった。物故した偉大なドキュメンタリストから死にかけの先輩まで、景気の悪いことばかり。だが湿ったりもせず盛り上がるのは、各自もそろそろ泉下に入ることを覚悟しているからか。残された後の時間は少なくなったという自覚か。
昔なら2次会で新宿に出かけたものだが、極寒の土曜日ということもあって、午後7時過ぎにはお開きになった。私は足が少し不自由になっているHさんを送って青山の宿まで行った。そこで1時間ほど昔話となった。Hさんは当初ラジオドラマから出発し、家庭番組や情報番組を担当してきた、女性ディレクターの草分けのような存在。今でこそ、女性のディレクターや記者が海外取材することは珍しくないが、Hさんの時代に初めてリツコさんが出かけたときのことをあれこれ聞いた。Hさんのテレビの代表作は写真家濱谷浩のドキュメンタリー。美しい新潟の海岸のラストシーンは今も鮮明に覚えている。
これ以外の、Hさん自身が思い出になった番組は何かと聞いた。宇野千代を3夜にわたってインタビューした女性手帳、戦争未亡人清水鶴子を追ったドキュメントという答えだった。後者の清水鶴子さんは、ちょうど同じ時期に、私もラジオドキュメンタリーとして取材していた。その当時を思い出して、話が盛り上がった。
最後に、Hさんが平松洋子のエッセーを愛読していると聞いて、我が意を得たりの想いがした。
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