64歳の春
「杉本文楽」が海外コンクールに提出されるので、その英語版作りで資料、文献を翻訳家に渡すことで、今朝も一騒動あった。やっと一息ついたので、パソコンの前に坐った。
デスクに、長崎からの大きな花束があるのを見て、自分の誕生日であることを思い出した。めでたさも中位かな。まさか64歳になっても番組のことでシャカリキになって走っているとは、二十歳の頃には思いもよらなかった。
昭和23年の1月19日生まれ、山羊座。64歳である。たしか大江さんも山羊座だったと思うが。日本が敗戦の憂き目のさなか。貧しさはひとしなみあった時代に生まれた。母方の祖父は、私の産湯のための盥(たらい)を闇市で購入して、その底に「為初孫」と記したそうだ。残念ながら、三島と違って、私は産湯のお湯が光で煌くことなど覚えていない。
先日見た、杉本博司の映画で、彼がはじまりに見た記憶のことを語っていた。眼鏡トンネルに見え隠れする大きな海だったそうだ。おそらく4,5歳の頃に親に連れられて超えた伊豆か小田原の海岸であろう。
私はどうであろう。吹雪のなかを幼稚園へ向かって体を倒して、一歩一歩長靴を進めていたことは覚えている。5歳の冬だ。よこなぐりの雪が嫌だなあと感じたことは今も覚えている。それ以前は思い出せない。たとえ記憶らしいものがあっても、親から聞かされて事後的に構成した記憶でしかない。
これまでで、一番時間が経つのが遅く感じたのは、小学校3年の夏休みに夏風邪をひいたときだ。一日が何と長いのか、夏休みが明けるまでの期間が何と長いのか、退屈でやりきれなかった。現在の時間は当時の10~20倍ぐらい早くなっている。いや30~50倍に加速されたかもしれない。兎に角、1年の経つのが早い。春が来たと思ったらもう秋も終わりに近づく。12ヶ月を4ヶ月ぐらいのスピードで時間が過ぎてゆく。
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