外海の旅

まだ、昨日12月11日の体験が心から離れない。ボーっと夢想している。
朝10時に長崎市内を出発して、外海町に向かった。
長崎からいくつも山を越えて、角力灘と出会う海沿いに集落は険しい山にへばりつくように広がる。町には黒崎川、出津川、神浦川の3つの川が流れて河口部に小さな集落が点在する。これが25年前に訪問したときの外海のイメージであった。いかにも、弾圧を恐れて隠れ住むキリシタンの住処に相応しい辺鄙な地だと思った。
私が長崎を離れて25年、この間に長崎は市街地も郊外も風景を大きく変えていた。開発が進んだというべきか列島改造がここまで地形を変えるのかと呆れるべきか、言葉がない。
山を巻くようにうねうねと続いた外海までの2車線の道はほとんど放棄されて、山の中腹をずどんと突き抜けたトンネルがいくつも作られて、長崎市内から外海まで労せずして30分ほどで到着できる。文明の恩恵に感謝するというより、風景の無残さにため息が出た。だが、その便利のおかげで「辺地」外海に日帰り旅が出来るようになっている。
小さな町だが、教会が3つもある。
まず一番大きな黒崎教会に向かった。ちょうどクリスマスの準備の時期の日曜日。おおぜいの信者たちが祭壇脇に大きなクリスマスツリーを立てていた。外は石造りだが、内部はいかにも日本的な木造の内陣となっている。200人は収容できるほどの広さだ。素朴な田舎の教会という佇まいが嬉しい。ドアは開け放してあるが寒くない。どうやら、力仕事に精出す信者たちの熱気がこもっているようだ。

残念ながら若い人はいない。私と同世代かやや年少かと思われる壮年たちが、可愛いツリーを築いていた。

次に向かったのは出津の教会。黒崎から崖ふちの道路を車で15分ほど行くと、集落の真ん中に白い教会がある。ここでは日曜日の礼拝は終わっていて誰もいなかった。黒崎教会の半分ほどの規模のこじんまりした教会だ。内部に入って、祭壇に一礼して、すぐあとにした。

そして、一番出会いたかった大野教会へ行った。山のなかのかなり深い場所に建っている。20年前は教会に詣でるだけでも苦労した場所。今では、すぐ傍まで車で行くことができる。未舗装の道路のところから車を捨てて、山道を上がっていった。
石造りの大野教会が林のなかにある。ド・ロ神父が指導して築いたという石壁のしっくいが時を経てねずみ色になっている。風雨に耐えた証だ。
無住の教会なので、施錠されていて中には入れなかった。
(つづく)
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