藤の花びらが散っていた
高き花はよし
昨年の今頃、山道を下ったとき、道の辺に薄紫の花びらが散り敷いていた。
回りを見てもそれらしい花は見当たらない。ふと、傍らの木の高い梢を見上げた。
想定外の高い位置に、藤の花ぶさがあった。
高い木に咲く花はなかなか気づかないものだ。
万緑の中に紫の花が美しく咲いていた。花の色が目にしみた。
三好達治の詩がある。
青葉がくれのたかどのに かぜの揺籃(ゆりご)の夢はなに
桐の花はた合歓(ねむ)の花 木ぬれにたかき花はよし
だいたいの意味はこういうことではないだろうか。
「春が深くなった日のこと。梢の先まで木々は葉をいっぱい茂らせている。
ふっと上を仰ぐと高い樹の枝先に花がさいて風にそよいでいた。
それまで、下ばかり見ていたので知らなかった、
こんな高い樹の梢に、こんな可憐な花が咲いているとは。
桐の花だろうか、合歓の花だろうか。
知らなかった、高い樹の花がこんなに美しいとは。」
ドラマのヒントになるかなと思って、この詩のことを、私は去年ユン・ソクホ監督に伝えた。
日韓共同で作るドラマの素材を探していたのだ。
そして、二人で酒を飲みながら、以下のようなシノプシスを話し合ったことを思い出す。
〈ヒロインの側にいて、ずっと彼女のことを愛してはいるが、ヒロインが気づかない男の
話。その男性は、ヒロインのためにいろいろ手助けをしたりアドバイスをしたりするが、
ヒロインはその愛に気づかない。頼りになるいい友人としか見ていない。
そのうえ、ヒロインは他の男性が好きになり遠くへ行くことになっても、男性は笑って見送る。やがて、ヒロインはとてつもない苦難に遭遇する。男は陰でヒロインのために働く。
ヒロインはそのことを知らない。男はずっと待ちつづける。
そして、人生の長い苦難の旅を終えて、ヒロインがもどったとき、彼女はその男性がいたこと、その愛に気づくのである。
ちょうど。高い梢にきれいな花を見つけたように。〉
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