秋の草花
ツヴァイクの道はどことなく湿っていた。昨日も雨はなかったのに、枯草も道に落ちたどんぐりも壮烈な蝉の遺骸も湿気を帯びている気がした。今年の秋は爽やかさがほとんどない。それでも森には秋の終わりを告げる兆候(しるし)がある。たくさんの木の実や草花の種が散らばっている。ススキの穂が銀色に光っている。つゆ草の青い花が可憐だ。
昨夜は杉本文楽が無事に放送された。家のテレビでリアルタイムで、自分の番組を見返すということは大切だ。作っているときには気が付かない視点がぽつぽつと湧いてくる。昨日の例でいえば、曽根崎心中の舞台となった大阪の商家や廓にまつわる情報を、鶴澤清治さんとからめて描く場面をこさえておけばよかったと思う。清治さんは大阪ミナミの出身で古い大阪の匂いをもった人だ。観音廻りの寺尽くしなどは、清治さんだからこそ作曲が可となったはず。その人に島之内の気質などを紹介してもらえれば、もっと視聴者には「曾根崎心中」の背景が理解できたのに。と朝の電車のなかで悔やんでいる。
さて、視聴者の反響、反応はどうであったのかしら。これから出局して、編成部でレーティング表でももらって来よう。むろん、教育テレビだから大きな数字は期待していないが、ETV特集枠の平均以上はとっていてほしい。それ次第で、もう一本番組を作るかどうかが決まる。
昨夜の番組は、演出をした杉本博司氏を軸に新しい文楽の誕生の姿をドキュメンタリーとして描いた。その文楽とは、近松門左衛門オリジナル「曾根崎心中・付り観音廻り」。およそ2時間半の演目である。この舞台を、わが取材チームは3日にわたって収録した。経済的にもきわめて厳しい状態のなか、スタッフは頑張って撮影、録音してくれた。素晴らしい舞台であったが、ドキュメンタリーのなかでは一部しか紹介していない。全体を見せたいが、そういう舞台中継の番組は今減っているため、映像は未だスリープ状態だ。
あるセクションから、昨日放送されたドキュメンタリーを見て、視聴者の反応がよかったら放送計画を立てようという声がかかった。願ってもないチャンスが来た。
これを実現するうえでも、放送結果が気になるのだ。
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