ぽん太の店
午後7時過ぎ、字幕(テロップ)がすべて入り、「速水御舟」がやっと出来上がった。あとは放送出来るように登録するだけとなる。半年にわたる仕事も山場を越えたと安堵した。
8月の大磯で行われた句会のときにカメラの蓋を忘れていった、ぽんたさんのところへ届けようと思い立つ。JR渋谷。山手線で目白まで行く。目白駅から東長崎行きのバスに乗り3角交番のところで降りる。ときわ荘のあった町だ。ぽんたさんと鉄馬さんが営む居酒屋ぽん太は旧ときわ荘と背中合わせにある。居酒屋といっても元デザイナーだったぽんたさんのセンスがいきとどいた小洒落た店だ。
引き戸を開けて入ると、満員の盛況だった。子供連れの客がテーブルを占拠していた。カウンターの空いたところに座ると、鉄馬さんがにこにこしながら「いらっしゃい」と声をかけてくれる。料理はぽんたさんが司り、酒の番とおでんは鉄馬さんが担当している。熱燗を頼むと「高清水」をつけてくれた。
料理を終えて一段落ついたぽんたさんも挨拶にやって来ると、忘れ物を渡し、今度の「曽根崎心中」の番組案内のビラも配った。「忙しそうね」と声をかけられ「貧乏暇なし。それも今週で終わり。やっと俳句に気持ちが向くようになったんでね、ここに来ました」と挨拶を返した。カウンターの向こうで鉄馬、ぽんたのご両人がにこにこ笑っている。
居心地がいいから、酒を2合、銀だらの煮つけでくいくいとやる。カウンターの隣に座っていた中年女性を紹介される。いつも句会の場所として利用させてもらっているスペイン料理の店のオーナーだ。この人はフランコが生きていた時代にスペインに留学していたとか。学習院の出身で、恩師は斉藤孝さんと聞いて、昔スペインの義勇軍について調べていた頃のことを思い出した。斉藤の中公新書「スペイン戦争」は何度も読み返した愛読書だったのだ。そんな話で席が盛り上がり、すっかり出来上がった。9時半過ぎ、ぽんたさんの店を出て、月夜の目白駅に向かう。
目白駅は余分なものが少ないすっきりした駅舎で好きだ。月光がホーム全体を明るくしていた。
来られた記念に下のランキングをクリックして行ってくれませんか
人気blogランキング