人生下り坂
「速水御舟」のECS編集が終了するまでデスクで待機していたから、退社時刻は9時を回っていた。たまたま庶務担当のU部長と同じ帰り道になったので、立ち飲みの丸木屋に寄ることにした。久しぶりに10時まで酒を飲んだ。ビール1本を二人で分け、さつま白波のお湯割りを2杯飲んだ。話題は仕事の段取りと景気の動向のことばかり。オトナの話題はつまらない。そんななかU部長が何気なく言った言葉に傷ついた。心がかじかんだ。そのままシミとなり、思いがけずじわりと広がった。酒など飲まなきゃよかった、後悔した。
家に帰りついて、どうしても映画「セント・エルモス・ファイアー」が見たくなり、DVDをセットした。7人の男女の学生仲間のなかでのある恋模様が気になって仕方がない。頭から1時間半ほどは早回しにして、残り40分ほどをぼんやり見た。見ながら、「青春の光と影」の曲を久しぶりに思い起こしていた。この映画はまるで青春の神話を見ているようだ。
そしてラストシーン。メンバー全員で長距離バスに乗ってニューヨークに向かう仲間を見送る、別れの場面だ。見送った後、馴染みのレストランバー「セント・エルモス・ファイアー」の前を通りすがるときの画面に嫋々と流れる気分が、当方の胸に沁みこんでくる。遠い日の、私も人と別れていった時代のことを重ねていた。「青春の十字路」という言葉がぼんやり浮かんだ。時計を見たら午前1時を回っていた。
今朝の光のなかで、嫌な気分は振り捨てよう、楽しいことだけ思い描こうと自分に言い聞かせた。昨日の夕方にもらった電話のことを思い出した。
電話の主は、3年前に「冬ソナ」談義をしたカルチャースクールの会員のKさんだ。半年の講義を終えたあとも、年に1,2度懇談をすることがあったが、さすがに3年経って音信も絶えていた。冬ソナを愛する有志5人は全員女性。平均年齢70。最高齢は80歳を超えている。その人たちが、久しぶりに私と話をしたいと呼びかけてきたのだ。私の番組作りの話を聞いていると元気が出るというのだ。ちょっとくすぐったい気がした。それにしても当てにされるということは嬉しいものだ。
20日を過ぎれば仕事に段落がつくから、その頃お会いしましょうと返事をした。
メールをチェックしたら、シンガーソングライターのYさんからも一度食事でもしないかとお誘いがあった。与謝野晶子や金子みすずを歌い続けている信念の人だ。最近、茨木のり子の新曲を出したというニュースを何かで読んだ。Yさんとは30年以上の付き合いがあるが、この3年ほどはすっかりご無沙汰していた。そろそろお会いしたいと思っていた。 Yさんにも20日過ぎに連絡をするとしてメールを返しておいた。
BSプレミアムの番組で、火野正平の日本全国自転車の旅がある。たしか私と同年だから還暦を越えて頑張っている。その自転車の旅、苦しいのは坂道だが、下り坂は別だ。楽ちんだ。そこで叫ぶ「人生下り坂、最高」。この言葉、当分わたしのモットーにしよう。
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