秋風吹いて
[バニシングポイント]という映画があった。暴走を繰り返した挙げ句、警察の敷いた防御線にあえて突っ込んで爆死する物語だったと記憶する。
その消失する瞬間をバニシングポイントと呼んでいた。
今とりかかっている速水御舟の「炎舞」で、蛾が炎に焼かれるさまが描かれている。9羽の蛾が舞っているが、よく目を凝らすと羽根だけ宙空に浮いたものがある。ここを奥本大三郎さんはバニシングポイントと見た。焼かれた蛾が、この世からあの世へ移っていくまさに消失点にあると読み取ったのだ。
先日手がけた「曾根崎心中」でも、死は段階的であるという主題があった。死は一気に訪れるのでなく、徐々に進行するという。その最後の瞬間がバニシングポイントということになるのだろうか。
九州時代にお世話になった、福岡で芸能番組の統括として活躍したWさんが亡くなった。71歳だった。密葬だったので、かなり親しい人でも訃報を得たのは死後7日経っていた。敬愛する先輩のYさんはWさんと大学時代からの親友だったので、この知らされない死にいたく衝撃を受けることになった。
昨夜、Yさんと久しぶりに居酒屋で飲んだときに聞かされた。いつも穏やかなYさんであるが、さすがに親友の死はこたえていた。今どき、70代初頭で倒れるということが驚きでもあったようだ。
と思って、何気なく新聞の訃報欄を見たら、俳優の山内賢が67歳で病死という記事があった。ベンチャーズに魅了された私らの世代のシンボルのような役者だった。彼が歌ってヒットした「二人の銀座」はベンチャーズの作曲ではなかったろうか。子役で演じた「コタンの口笛」は学校が引率して見せた映画だったが、心に残ったことを思い出す。今、ウィキペディアを調べてびっくり。この映画はシナリオが橋本忍、監督は成瀬巳喜男だった。
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