葉っぱのゴブリン
ゴブリン(goblin)は、ヨーロッパの民間伝承に出てくる邪悪な精霊を指す。主にファンタジーに登場することが多い、伝説の生物である。おふざけが好きで意地の悪い(だが邪悪とは限らない)妖精である。 大江健三郎の『取替え子』のなかで初めて知った。
昨日の台風15号によって、お山の森の木々は久しぶりに荒々しい顔を見せた。小枝はバシバシ軋み、葉っぱはブツブツぶっちぎれて飛び回る。葉は一枚で暴れるのでなく、それが2分3分された干しわかめのような破片になって飛び回るのだ。黒い邪悪な風体は、普段の可憐な葉っぱとは全く違う悪魔の顔だ。
ベランダのガラス窓から外をのぞいていると、まるで特攻さながらにその葉っぱのゴブリンはガラスに体当たりしてくる。窓の下には見る見るゴブリンの残骸の山となる。大木惇夫の「戦友別盃の歌」を思い出す。
わが征(ゆ)くはバタビヤの街(まち)、
君はよくバンドンを突け、
山の峰の上空には、無数のゴブリンが風に舞って漂う。その量たるや信じがたい。まるで森が全葉っぱのゴブリンを中空に向かって吐き出しているかのようだ。
停電になって、暗がりのなかで酒を飲み始めると、ゴブリンは邪悪な精霊となって襲ってきた。「おい、お前もジジイになって、だんだん昔が恋しいのだろう」「弱虫、泣き虫」。悪口雑言がわんわん響く。嵐の夜は、不思議な軽躁感が呼び覚まされる。
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