自分の知らない自分
久しぶりの総合検診。朝から5箇所を回って検査を受けた。
最後が胃カメラ、内視鏡検査である。大の苦手で、これまでに中断したことが二度ほどある。喉に麻酔をする事前準備段階から緊張がどんどん高まっていた。カメラを操作する医者は、私の胃の執刀を担当した人。明るくやってきて、さっとカメラを喉元に突っ込む。思わず咳き込んで待ったをかける。明るいその人は、この程度でどうしたのという顔。キュートな笑顔が意地悪婆さんに見える。
「異物侵入はもっとも苦手とするところでして」と言い訳をすると、一息いれることになった。「目を閉じては余計気持ち悪くなるから、うっすらと明けておいてください」と注意される。飲み込むコツは、鼻で息を吸って口で吐くこと。スー、ハ。スー、ハ。
カメラケーブル、再投入。ずるっとカメラが食道あたりまで入った。不快、不快。早く終われと叫びたくなる。
どんどんカメラは進入して、去年切除された胃にまで来る。「昨夜の食物がまだ残っていますね」と明るい女医は語る。自分としては、朝から食事を摂っていないので空腹なのに、自分の胃には食物が残っているとは。また、ここに自分の知らない自分がいた。
16年前、脳出血を発症したときだ。私は数日間意識を失った。だが、そのときに私は普段どおりに受け応えを行い、トイレにも行っていると後で聞かされる。まったく記憶にないのだ。そのとき私はおびえた。私の知らない私がいると。その実感は、その後たびたび訪れるようになった。今回の胃に残った食物もそのひとつだ。
私は、私のことを一番よく知っていると考えることは迷盲だ。「汝自身を知れ」というではないか。何も知らないから、知れと何かが私に命じる。
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