あの頃
小学校の頃の夏休みを想い出す。朝のラジオ体操を終えて、午前中は宿題を片付けていた。
8月の終わりは、始まる学校の準備に追われた。いつも、算数のドリルの後半が残っていた。西東三鬼の句を読むたびに、その秀逸に感動する。
算術の少年しのび泣けり夏
あの頃の友達の顔を思い浮かべる。森山くん、菊川くん、宮本くん、沢崎くん、岡野くん、
みんなどこへ行ったのだろう。故郷に帰っても、その噂は聞いたことがない。工業高校へ行ったのが数人いたが、ほとんどは中学を出ると就職した。都会へ出て行ってそのままになったのだろうか。
夏休みの終わり、夕方から夜にかけて何をやって遊んでいたかはっきりしない。これという遊びもやらず、日蔭に入って、蟻の行列を見ていた。日暮れは赤とんぼを追い回した。蝙蝠を追ったこともある。田んぼに入って、イナゴを積んで、サイダーの瓶に詰め込んだ。
ある年の自由研究で、石を集めたことがある。方解石や黄鉄鉱を探して、線路向こうの防空壕跡に入ったこともある。コッぺパン2つもって1日洞穴で遊んでいた。気の利いた道具などない。せいぜい肥後の守1本だった。そのナイフの先で岩石を切り出していた。堀文雄くんは級長で理科が得意だった。石のコレクションは彼が始めたので、真似たのだ。夏休みが終わって、自由研究の発表会では彼の作品が特賞に選ばれていた。
堀くんは6年生の頃、福井へ引っ越して行った。彼の親戚に俳優の宇野重吉という人がいる。少し自慢げに語ったことを覚えている。藤島高校へ進学したことは、風のうわさで聞いたが、その後は知らない。
夕飯を食べて、行水を浴びたら、8時過ぎになった。その頃になると目がしょぼしょぼした。10時過ぎまで起きていることはめったになかった。蚊帳をめくって布団に身を投げ出すとすぐ睡魔が来た。歯も磨かず手も洗うことなく寝たことを、母はぶつぶつ言っていた。その声がだんだん遠くなっていった。
来られた記念に下のランキングをクリックして行ってくれませんか
人気blogランキング