風よ雲よ空よ
風よ雲よ空よ お前たちは知ってるかい、というペギー葉山が歌った歌があったよな。
ラジオ歌謡かなにかで流れていた。学生時代の頃だから1968年ぐらいだったろうか。
夏の信州の山々を思いながら、この歌を聴いていた。
暑い日が続いて危険とワイドショーは警告しているが、あの頃だって相当暑かった。連日35度を超えていたし、熱帯夜は1週間は続いていた。クーラーなどはなく、もっぱら団扇しかなかった。本を読むべき時代であったが、読んでいない。もっぱら貸本屋の大衆小説ばかり読んでいた。石原慎太郎の青春小説や山田風太郎の忍者小説だった。白土三平に夢中になっていたか。映画は好きだったが、劇場で見る金もなかった。
外国へ行くことに憧れていた。五木寛之のようにシベリア経由でヨーロッパへ行ってみたいと夢想していた。近づいていた1970年代というものが、何か希望に満ちたものがあると、無根拠に信じていた。せめて気分だけでも味わおうと、五木がよく溜まっていたという喫茶店ローレンスに入り浸っていた。
思い立って内灘へ行った。暑い日なのに、木陰などない砂浜の海水浴場へ向かった。金沢駅そばの私鉄の駅から電車に乗ってガタコト揺られた。
案の定、内灘の砂丘は白茶けて、爆発しそうなぐらい暑かった。そこまで行ったのに水遊びもしないで町まで戻った。あの頃の駅前はバス乗り場しかないさびれた場所だった。常盤橋経由循環バスに乗って尾張町まで。
夕方になると、卯辰山に登った。頂上の公園まで上がり、遠く日本海を見て降りてくるだけの意味のない散歩。金がなく時間だけが余っていた。
それから半月ほど経った秋祭りの頃、胸ときめく出来事に出会う。あの狂おしいような激しい時間がやって来るのだ。そんなことも知らず、時間を持て余してぼくは退屈していた。
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