最晩年が鵙のように来る
昨夜は久しぶりに劇映画を見る。ブルース・ウィリス主演の「ジャッカル」。冷戦崩壊直後のギャングの争いにからむ国際的殺し屋のお話。筋の運びはどうってことないのだが、ハリウッドのオカネのかかった贅沢な撮影に安心して楽しめる。長い作品でR1だけ見た。R2は週末のお楽しみだ。
劇映画を見たせいか、久しぶりに映画館で本編上映を見たくなった。ジブリの話題の「コクリコ坂から」などは面白そうな気がするのだが。
河野裕子本が売れている。書店に行くと一番目立つ場所に3冊の河野本がある。亡くなって1年ほどになるか。追悼を兼ねて、夫の永田和宏が書き下ろした二人のことの本とか、河野のエッセーなどが、今中高年の心を掴んでいる。1か月ほど前に、ETV特集で報じられたことも大きく影響しているかもしれない。いい番組だったが、物足りなかった。私ならもっと河野の内面に入り込むがと、画面を見ながら惜しく思った。
4年前になるか、まだ元気で短歌投稿に燃えていた母に、好きな歌人は誰かと聞いたら永田和宏を挙げた。以来、その名に注意をはらってきたが、永田の妻のことのほうが話題になることが多かった。乳がんと戦って生きていることに共感する層があったのだろう。
河野の歌。
たとえば君 ガサッと落葉すくふやうに私をさらって行ってはくれぬか
細い外見とはまったく違う情熱的な歌に触れたとき、こりゃ永田も大変だろうなあと同情した。だけど、私の好きな河野は別の顔だ。
階段の途中でふっと立ち止まる、窓の空、ああ切り通しのやう
いい歌だ。胸の中を爽やかなものが流れていく。読点が実に効いている。
河野は64歳で死んだ。早い生涯だが、羨ましくもある。原田芳雄もそうだが、長いばかりが人生でもあるまい。
もういいかい、五、六度言ふ間に陽を負ひて最晩年が鵙(もず)のように来る
この歌を汗をかきながら読んでいるが、秋が深まった頃に読むとどういう心境になるのかしらむ。やはり人の生の儚さを思うのだろうか。
最後に、夫の永田の歌も掲げておこう。今、ネットで調べたら永田は私より1つ上だが学年は同じだということを知った。
一日が過ぎれば一日減ってゆく君との時間 もうすぐ夏至だ
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